近年盛り上がりを見せているのが、「D2C」と呼ばれるビジネスモデルです。
仲介業者を挟まず、事業者や企業が消費者に直接商品・サービスを販売するD2Cでは、従来とは異なる手法で広告運用を行います。
この記事では、D2Cに適した広告運用やD2C広告で重要な指標、D2CのROAS(広告費用対効果)を高める方法などについて詳しく解説します。
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この記事でわかること
・D2Cに適した広告運用
・D2C事業向け広告と従来の広告との違い
・D2Cの広告運用で集客するポイント
こんな方におすすめ
・D2Cビジネスで広告を運用しているが成果が出ない
・D2CのROAS(広告費用対効果)を高めたい
・D2Cでの広告運用の成功事例が知りたい
1. D2Cに適した広告運用とは
自社で企画・製造した製品を仲介業者を挟まず、直接消費者に販売するD2C(Direct to Consumer)ビジネスは、スマートフォンやSNSの普及によって拡大しました。
インターネットを使い、常に膨大な情報に晒されることが当たり前になった現代のユーザーには、マス広告のような幅広い範囲をターゲットにした広告は響きにくいため、よりターゲットを絞り込んだ「その人に合った価値」を提供できるかどうがか重要です。
2. 従来の広告とD2C事業向けの広告の違い
では、従来の広告とD2C事業向けの広告では一体どのような違いがあるでしょうか?ここからは、具体的な違いについて解説します。
2-1. 出稿先の選択肢が豊富
D2C時代の広告は、広告出稿先の選択肢が豊富であることが特徴の一つです。
従来の広告の場合、テレビCMやラジオ、雑誌、新聞広告など出稿先がいくつかの選択肢に限られていました。D2Cの場合、これまで活用されていた広告出稿先に加えて、SNS広告やリスティング広告といった、デジタル広告が中心です。
SNSだけでもInstagram、Twitter、LINE、TikTok、YouTube、Facebookなどの種類があり、自社商品・サービスや目的に合わせて最適な出稿先を選定できます。
2-2. SNSからの流入に期待できる
従来は検索エンジンからの流入が中心でしたが、D2C時代の広告ではSNSからの流入に期待できます。
好きなブランドや気になっているブランドをフォローし、毎日アカウントの投稿の中で気になる内容があればリンクをクリックして、更に情報を取得するといった仕組みです。
D2CはSNSが主戦場であり、商品検索、レビューのチェックなども検索エンジンを利用せずSNSからダイレクトにブランドのWebサイトにアクセスするケースも少なくありません。
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2-3. 顧客ニーズに合った広告を掲載できる
D2Cでは、デジタル広告が中心です。SNSなどから集めたデータや個人情報をもとに、一人ひとりの好みやニーズに合わせた個人向け広告の掲載ができます。
従来のマス向け広告は幅広いターゲット層に同じ内容を訴求するというもので、不特定多数のユーザーに情報を届けることができる一方、狙ったターゲットへのピンポイントなアプローチはできませんでした。
マス広告は広告の効果測定がしにくいことがデメリットでしたが、D2C時代の広告ではデータを分析することで効果測定、改善に活かすことができます。
2-4. 顧客との双方向コミュニケーションを図れる
企業と顧客が双方向のコミュニケーションを図れることも、デジタルが中心となったD2C時代の広告の特徴です。
テレビCMやラジオ、新聞広告や雑誌といった従来のマス広告は、企業が届けたい内容を一方的に表示するというものでした。
D2C企業の多くが活用するSNSでは、コメント(リプライ)やDM機能、アンケート機能、シェア機能、いいね機能など手軽な機能を使って双方向コミュニケーションを図っているケースも多く、ユーザーから寄せられた声を反映した広告を掲載できます。
2-5. 商品だけでなくCXも重視されている
従来は、「商品やサービスそのものの見た目・機能・価格」に魅力を感じて購入するというケースがほとんどでした。しかし、このような合理的な価値だけでは、自社と他社を差別化することは難しくなってきています。
D2Cでは、事業者や企業が提供する商品だけでなく、CX(Customer Experience/顧客体験)も重視されています。
ブランドが作られた背景、商品に込められた想い、作ったのは誰か、購入までの過程や購入後のサポートなど感情的な価値や体験を重視することで、商品に体験や思い出といった価値を付加しているのです。
3. D2Cの広告で重要な指標
D2C広告では、ROAS(Return On Advertising Spend/広告費用対効果)を測ることが重要です。
ROASとは広告にかけたコストに対してどれだけの売上があったかを表す指標のことで、計算にはCPA・CPO・LTVといった他の指標が必要です。
それぞれの指標について、詳しく見ていきましょう。
3-1. CPA(獲得単価)
CPA(Cost Per Action/獲得単価)とは、コンバージョンに設定した任意の顧客行動を獲得するためにかかったコストのことで、【広告費用 ÷ コンバージョン数】の式で算出できます。
CPAには会員登録や問い合わせなど直接的に売上につながらないアクションも含まれます。
3-2. CPO(注文獲得単価)
CPO(Cost Per Order/注文獲得単価)とは、顧客一人に商品を購入してもらうためにかかったコストのことで、【広告費用 ÷ 注文件数】で算出します。
CPOを見ることで、新規顧客を効率的に獲得できているかどうかがわかります。
3-3. LTV(顧客生涯価値)
LTV(顧客生涯価値)とは、顧客一人あたりが生涯にわたって企業にもたらす利益のことです。
LTVの計算方法はいくつかあります。
①平均顧客単価×平均購買頻度×平均継続期間
②顧客の年間取引額×収益率×顧客の継続年数
③顧客の平均単価×粗利÷解約率
LTVを算出する目的に沿って、最適な算出方法を選択します。
LTVが高いということは、リピート購入が多いこと、顧客と良好な関係が築けているということになります。
また、LTVの計算する際に、1年で期間を区切って測定する、年間LTVという考え方があります。
年間LTVは、単品通販など、顧客の購入サイクルが短い場合に使用されることが多い指標です。
3-4. 年間ROASは年間LTVから変換
ROASの中でも、1年間の広告効果を測る「年間ROAS」は必ず把握しておきましょう。年間ROASは【年間LTV ÷CPO(新規顧客の獲得単価)】の計算式で算出できます。
D2Cはリピート購入で売上を上げるビジネスモデルであるため、1回の商品購入のみでは投じた費用を回収できません。そのため、新規顧客1人あたりの獲得コストを下げつつ、年間購入単価を高めることが重要です。
4. D2CのROAS(広告費用対効果)を高める方法
ここからは、具体的にどのようにすればD2CのROAS(広告費用対効果)を高めることができるのか、その方法について解説します。
4-1. 商材や市場規模に応じた運用
広告運用をする前に、的確な媒体選定・配信方法・ターゲティングの設定を行う必要があります。
商材のTAM・SOM・SAMをきちんと見極め、目的に応じて広告を使い分けることが大切です。
広告の予算がリーチに対して適切に設定されているか確認しましょう。市場規模が小さく、リーチが少ないと予算を消化しきれないケースもあります。
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4-2. クロスセル・アップセル対策
ROASを高めるためには、欲しい商品と一緒に他商品も購入してもらう「クロスセル」や、購入を検討しているものよりも更に上位の商品を購入してもらう「アップセル」も重要です。
具体的には、既に化粧品を定期購入している固定客に対し、合わせて使用することでより高い美容効果が期待できる美容液をおすすめする、などがあります。
フォローメールでお得なキャンペーンやお試しモニター価格を案内する、定期購入の同梱物にクロスセルしたい商品のサンプルやパンフレットを同梱するなども有効です。
4-3. CRMを活用したCPOの改善
CRMのセグメント・リストを広告配信に使用することで、ターゲティングの精度を上げることもできます。
ECサイトの行動などから、顧客の抱える課題にピンポイントに訴求することができます。
ただし、ボリュームが最低でも1万程度あることが前提となるため、注意が必要です。
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4-4. CPA・LTVをKPIに設定した施策
D2Cで収益を上げていくためには、CPAとLTVをKPIに設定した施策を実施することが重要です。このような点を意識せずに広告を打つと、投資したコストが回収できているかどうかがわからなくなってしまいます。
CPAとLTVをKPIに設定し、どのようにすれば目標を達成できるのか、そもそも採算が合う施策なのか、検討しましょう。
5. D2Cの広告運用で集客するポイント
ここからは、D2Cの広告運用で集客するポイントを、広告媒体ごとにご紹介します。
5-1. SNS広告
SNS広告は、多くのD2Cで活用されている広告です。
SNS広告は、ターゲティングの精度が高い、ユーザーの投稿と似た形式で表示でき広告への抵抗感を生みにくいというメリットがあります。
SNSにはInstagram・Twitter・LINE・TikTok・YouTube・Facebookといった種類があり、それぞれ特徴が異なるため、目的に合わせて最適なSNSを選びましょう。
Instagramでは、自社商品やサービスに興味関心がありそうなユーザーに対し、以下のような画像や動画を使った広告でアピールできます。
・フィード広告
・リール広告
・ストーリーズ広告
・ブランドコンテンツ広告
・ショップ広告
・発見タブ広告
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Twitter広告には、豊富なターゲティング機能があり、いいねやリツイートといった機能で拡散も期待できます。Twitter広告には以下の3タイプがあります。
・プロモツイート
・プロモアカウント
・プロモトレンド
■LINE
LINE広告は、以下のようなさまざまな配信面に広告が配信されます。LINEは国内でも屈指の普及率があり、インフラ化しているため、広い年齢層のユーザーにリーチできることが特徴です。
・タイムライン
・LINE NEWS
・Smart channel
・LINE広告ネットワーク など
■TikTok
近年、若者を中心に人気が広がっているTikTokでは、以下の3つを配信先として選択できます。スマホに特化した縦型動画(9:16)の出稿が推奨されており、他のSNSと比べてBGMも重視されていることが特徴です。
・インフィード広告
・キュレーションアプリ
・Pangle
■YouTube
YouTube広告は、動画広告を出稿できることが大きな特徴です。世界中に利用者がおり、日本国内でも2人に1人はYouTubeを利用している計算だといわれています。
動画広告は心に残りやすい一方、「嫌われる・飽きられる」のように態度変容を起こしやすいといわれているため、注意しながらクリエイティブ制作を行う必要があるでしょう。
YouTube広告の出稿形式は、広告枠が動画枠(ストリーム)の中にあるか外にあるか、その他で大きく3つに分かれています。
・インストリーム広告(TrueViewインストリーム広告、バンパー広告など)
・アウトストリーム広告
・その他の広告(TrueViewディスカバリー広告、マストヘッド広告など)
実名登録が基本のFacebookでは、年齢や地域、勤め先などに合わせて精度の高いターゲットを行えることが特徴です。他のSNSと比較するとフォーマルな媒体であるため、言い回しや訴求方法に注意する必要があります。
Facebook広告には、以下があります。
・フィード広告
・ストーリーズ広告
・インストリーム広告
5-2. ショッピング広告
ショッピング広告とは、検索エンジンで検索したキーワードに合わせて、商品画像と詳細情報が表示される広告のことです。
商品の画像と説明文、価格が表示される仕様になっており、検索結果上部に掲載されるため、ユーザーの目に留まりやすいという特徴があります。
5-3. リスティング広告
リスティング広告とは、GoogleやYahoo!など検索エンジンで検索したキーワードに合わせて、検索結果に表示される広告のことです。
SEOによって上位表示させるためにはノウハウや手間、時間が必要ですが、リスティング広告の場合は広告費を支払うことで、すぐに検索結果の上部に表示できます。
ターゲットとするユーザーが検索しそうなキーワードを分析した上で広告を配信すれば、精度の高い集客が行えるでしょう。
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5-4. ディスプレイ広告
ディスプレイ広告はメディアサイトやブログの広告枠に表示される広告で、画像や動画、テキストでブランドの世界観をアピールできます。
リッチなクリエイティブを配信できる広告であるため、A/Bテストを繰り返し、最適なクリエイティブを作成しましょう。
5-5. アフィリエイト広告
アフィリエイト広告とは成果報酬型広告とも呼ばれ、ユーザーが広告をクリックし、購入した場合に広告費が発生する広告です。
元々、メディアアフィリエイトが基本でしたが、KOLアフィリエイトも増えてきています。
インフルエンサーの拡散力と信頼感を活かした方法であり、第三者の口コミとして訴求できる特徴があります。
6. D2Cでの広告運用の成功事例3選
6-1. BASE FOOD(ベースフード)
BASE FOODは、1日で必要な栄養素を手軽に摂れる完全栄養食を販売するD2Cブランドです。
SNSユーザーによって生成された自社の商品の口コミ・評価(UGC)を活用し、広告の訴求軸のブレを修正することでCVRの向上に成功しています。
さらに、ディスプレイ広告やAmazonのスポンサープロダクト広告も出稿しており、幅広い手法で認知度向上や新規顧客獲得に注力しています。
6-2. BULK HOMME(バルクオム)
BULK HOMMEは、2013年設立のメンズスキンケア商品を提供するブランドです。デジタルマーケティングが強みの企業で、売上の8割をオンライン販売が占めているといいます。
あらゆるプラットフォームで広告を配信し、初回特典として質の高いメンズスキンケアアイテムを安く販売。その後、定期購入を促すというステップによって顧客を育て、安定した収益につなげています。
6-3. COHINA(コヒナ)
COHINAは、身長150cm前後の小柄な女性のためのアパレルブランドショップで「小柄な体型の自分に似合う服がほしい」と当時大学生だった創業者がスタートしました。
COHINAは広告配信に加えて、毎日Instagramでライブ配信をし、リアルタイムでユーザーとコミュニケーションを取りながらブランドの世界観や商品の魅力を発信。地道にSNSを運用することで売上拡大に成功しています。
7. AnyMindがD2C事業での広告運用を包括的にサポート!
D2Cが広告で成果を出すためには、見込み顧客を狙った広告配信やCRM活用によるCPO改善、CPAやLTVをKPIに設定した施策などが有効です。
広告配信の際には、1年間の広告効果を測る年間ROASは必ず把握しましょう。また、D2Cにはデジタル広告の活用が効果的ですが、広告に頼らない販売手法も重要とされます。
「AnyMind Group」では、D2C事業者向けの広告運用やマーケティング、サイト構築、フルフィルメントサービスまでワンストップでご提供しています。
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