競争の激しいEC業界では、EC戦略の立案が非常に重要です。ECサイトの構築・運営する前の下準備としてはもちろん、今後事業を成長させるためには方向性が的確なEC戦略を策定することが必須です。
しかし、ノウハウを持たずEC戦略の立て方がわからないというケースも少なくないようです。
そこでこの記事では、ECサイトの売上アップや事業の成長に繋がる重要な戦略と成功事例をご紹介します。
この記事でわかること
・EC戦略の重要性、重要となる軸
・業界・商品による戦略の違い
・EC戦略の参考にできる成功事例
こんな方におすすめ
・自社に合ったEC戦略の立て方がわからない
・ECサイトの売上アップに繋がる戦略を立てたい
・成功事例の取り組みを参考にしたい
1. EC戦略の重要性
以前から拡大し続けているEC市場ですが、コロナ禍においてオンライン消費の需要は急速に高まっています。
競合ECサイトや大型ECモールがひしめき合っており、さらに、D2Cやサブスクなど、ビジネスモデルが複雑になっています。
このように拡大し複雑化する市場で売り上げを安定させ、事業を成長させていくためには、EC戦略の方向性を的確に定めることが必須になります。
2. EC戦略で重要な5つの軸
EC戦略を策定する上で重要なことは、現状を把握し、 売上を向上させることです。
売上はセッション数 × CVR × 顧客平均単価であるため、売上を構成する3つの要素を向上させる必要があります。
・競合サイトを分析する
・顧客分析をする
・セッション数を上げる
・コンバージョンを獲得する
・リピーターを確保する
以上のポイントをもとに、EC戦略の5つの軸をご紹介します。
2−1. 競合サイトを分析する
EC戦略で重要な軸の一つめが、他社や大手ECモールなど、競合サイトの分析です。競合サイトを分析することで、自社ECサイト戦略の方向性を定めやすくなります。
ECは市場規模が大きく、自社と似た商品・サービスを取り扱っている競合が存在している可能性も考えられるでしょう。競合がすでにシェアを獲得している場合、同じような戦略では売上アップにつなげることは難しいといえます。
そこで、差別化のための戦略を立て、競合とは違う見せ方や方向性で自社商品・サービスをアピールする必要があります。競合サイトの分析は顧客やターゲット層の明確化にも繋がるため、しっかりと分析を行いましょう。
2-2. 顧客分析をする
ECサイトや実店舗の顧客データの収集・分析を行う顧客分析は、ECの売上アップに欠かせません。
顧客分析にはさまざまな手法がありますが、ECに活用できる代表的なものとしては以下があります。
・CPM分析……顧客の購買データをもとに分析する手法
・RFM分析……Recency(最新購入日)・Frequency(累計購買回数)、Monery(累計購買金額)という3つの指標をもとに分析する手法
・デシル分析……購入金額ごとに顧客を10グループに分けて、それぞれのグループごとに購入比率や売上構成比などを分析する手法
ユーザーの行動や属性について詳細に分析することで、異なるニーズを持った個々の顧客に有効なアプローチが可能になります。
2−3. セッション数を上げる
実際にどれだけ自社ECサイトに顧客を集客できているかを示す数字であるセッション数(訪問数)を上げることもEC戦略において重要です。
セッション数を上げるための対策はSNS運用、自社ECサイトのコンテンツを強化するSEOやコンテンツマーケティング、Web広告などの出稿、メールマーケティング(メルマガ)、口コミやレビュー対策、ネットと実店舗を融合させるオムニチャネル化などさまざまです。
SNSやSEOなど、ある程度の期間が必要となる施策もあるため計画的に行いましょう。
2-4. CVRを向上させる
ECマーケティングが成功しているかどうかを判断する指標が「CVR(コンバージョン率)」です。
集めたセッションを無駄なく購入につなげられるように、CVRを向上させる必要があります。
・ECサイトのページ構成や商品情報の見やすさ
・ユーザー目線のわかりやすい、使いやすいUX/UI
・口コミやレビュー(商品の信頼性)
・商品構成の見直し、価格の見直し・調査 など
上記のような点を見直し、積極的に改善していきましょう。
2-5. リピーターを確保する
「新規顧客を増やすよりも効率が良い」「ECサイトの全体売上の約8割はリピーターによるリピート購入によるもの」といわれることがあるほど、ECサイトにおいてリピーターは非常に重要な存在です。
リピーター確保のためには、クーポン券やリピート特典、ユーザーからの信頼の獲得(素早いサポート対応など)、SNSの活用、データ分析などによって「またこのお店で買い物がしたい」という動機づけをし、来店が途切れない仕掛けをつくりましょう。
【関連記事】
ECサイトの売上アップにつながる施策9選! 購入率を伸ばす方法を解説
3. 業界・商品によって異なる戦略
ECはECでも、業界や商品によって最適な戦略は変わってきます。大きく分けると「単品リピート通販」と「総合通販」の2つです。
単品リピート通販と総合通販の違いについて、表で確認してみましょう。
単品リピート通販 | 総合通販 | |
商品の特徴 | 主にBtoC向けの化粧品・コスメや健康食品などの消耗品 | 雑貨・服・家電などBtoC向け商品など幅広い |
取扱品目 | 1種類もしくはごく少数 | 複数 |
ビジネスモデル | 取扱品目を絞り、商品・サービスを顧客にリピート購入してもらうことが前提 | 多くの商品を取り扱い、クロスセルが中心 |
リピート・購入頻度 | 消耗品が多いため定期的にリピート購入されやすい | 同じ商品は購入されにくい(日用品の中でも消費財は除く) |
利益率 | 高くなりやすい | 低くなりやすい |
価格競争 | 起こりにくい | 起こりやすい |
顧客獲得費用・期間 | 認知度が低いため顧客獲得費用(広告費など)や期間がかかる傾向にある | 比較的低く抑えられる |
販売施策 | リピート購入促進のためのさまざまな施策を行う | 商材がバラバラなケースも多く、汎用性の高いポイントになどの販売施策に限られる |
同じECといっても業界や商品によって上記のように多くの違いがあるため、自社商品・サービスに合わせた戦略を立案することが大切です。
4. 総合(アパレル)通販のEC戦略
ここからは、総合(アパレル)通販のEC戦略や成功事例についてご紹介します。
4-1. 競合に負けないブランディング
総合通販は、単品通販と違い、競合が数多く存在します。その中で自社のブランドが勝ち残るには、ブランドの差別化が重要です。
ターゲティングやペルソナを明確に設定をして、ターゲットに刺さる世界観を作りましょう。
SNSで自社や商品の魅力が伝わるコンテンツを発信することで、ブランドのメッセージを伝えたり、ブランドイメージを定着させることができます。
ブランディングを強化することで、自社ECサイトの集客力を上げることも可能です。
4-2. モールに依存しない、自社ECサイトへの集客
総合通販では、集客が難しいという課題があります。
ECモールの場合、モール自体の集客力に頼ることで大きく売上を上げることが可能ですが、購入した顧客のほとんどがブランドを認知しないため、リピートにつなげることが難しいと言われています。
さらに、ECモールは価格競争が激しく、売上を安定化させにくいというデメリットもあります。
長期的にECを運営していくためには、モールに依存せず、自社ECサイトの集客を伸ばすことが必要です。
SNSやSEO、Web広告など、さまざまな集客方法を活用し、自社ECの流入数を増やすことで、効率的に新規顧客を獲得できるようにしましょう。
4-3. オンラインの不便さを解消する
ECでは、現物を見比べたり、試着ができないため、オフライン購入よりも返品率が高い傾向にあります。
顧客に合ったサイズ感を提案できるサービスや、チャット機能を導入することで、オフラインに近い購買体験を可能にし、ミスマッチを防ぐことが重要です。
また、他の商材に比べて返品率が多いことを見据えた返品の動線を設計することで、顧客の不安を解消し、購入を促進することができます。
4-4. 適切な在庫管理
扱う商品が多い総合通販は、在庫管理も大きな問題となります。
在庫管理を適切に行わないと、販売機会の損失や不良在庫の原因になります。
特にアパレルでは、季節・年でトレンドが変わるため、オンタイムで在庫の全体像を把握しなければなりません。
在庫を一元管理できるツールを導入することで、適切に管理することができます。
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4-5. 顧客ロイヤリティを向上させ、ファンを獲得
顧客ロイヤルティを向上させ、ブランドのファンを作り出すことで、顧客LTVの向上につながります。
さらに、ファンがブランドの情報を発信し、さらなる顧客獲得につながるという良い循環を作ることができます。
顧客ロイヤリティを向上させるには、SNSでの継続的なプロモーションや返信機能やダイレクトメッセージ機能を活用した双方向のコミュニケーションが大切です。
4-6. 成功事例
ここからは、総合(アパレル)通販の成功事例をいくつかご紹介します。
17kg
Z世代を中心に人気のファッションEC「17kg(イチナナキログラム)」では、顧客の声に向き合うため顧客とのWebチャットができるツールを導入。
その結果、問い合わせ導線を増やしたことによるクレームが約5割減。さらに、在庫切れ商品ページにポップアップ表示で他ページへの遷移を促したところ、約3割のユーザーがレコメンド先ページへ遷移し、購入に繋がるケースもあったそうです。
COHINA
2018年に創業し、ニッチな市場を開拓してきた「COHINA(コヒナ)」は身長140cm以下〜150cm前後の小柄な女性のための洋服を取り扱うアパレルブランドです。
COHINAが力を入れたのがInstagramのライブ配信で、身長155cm以下と小柄な女性スタッフによる配信内容が共感を呼び、リピート率の上昇につながったそうです。
Lil Ambition
ライブコマーサーの「ももち」こと牛江桃子がプロデュースするアパレルブランドの「Lil Ambition(リルアンビション)」は、ブランドローンチの際、Instagram上でライブコマース配信による商品紹介を行いました。
その結果、販売開始後わずか15分でウェア全商品が完売し、大きな反響を受けて追加販売が決定しました。
5. 単品(化粧品)通販のEC戦略
ここからは、単品(化粧品)通販のEC戦略や成功事例をご紹介します。
5-1. 明確な差別化を行う
単品通販は総合通販に比べて、選択肢が少ないことが特徴です。顧客は「このブランドで買うか買わないか」で判断することになるため、商品を明確に差別化することが重要となります。
5-2. ターゲティングは狭く明確に
狙ったターゲットに商品を届けられるよう、ターゲティングは狭く明確に行いましょう。
たとえば「20代女性」や「30代女性」だけでは、範囲が広すぎて漠然としています。ターゲットをより具体的にするため、年齢・性別・家族構成・居住地・職業・趣味など詳細なペルソナ像を作り、商品購入までのストーリーを作成しましょう。
「どんな悩みを持ち、どんな商品を探しているのか」など細かくペルソナを設定することで、具体的なターゲティングだけでなく、顧客目線のサイトづくりにもつながります。
5-3. 商品が売れる仕組みづくり
単品通販は広告費など顧客獲得のための費用がかかる傾向にあります。広告費を無駄にせず、自社ECサイトに最大限の利益をもたらすためには、商品が売れる仕組みをつくることが大切です。
1. 見込み客を効率よく集め
2. その多くを固定客(定期的に購入)に育て
3. その多くを優良客(他の商品も購入)にする
リピーター育成は、新たに顧客を獲得するよりも売上への費用対効果が大きくなります。上記の3ステップを継続していき、サブスクリプション(定期購入)へ誘導するなど、商品が売れる仕組みをつくっていきましょう。
5-4. 初回購入ハードルを低くする
単品通販は定期購入など顧客に定期的にリピート購入してもらうことが前提ですが、初回から定期購入に申し込んでもらうこと(ワンステップマーケティング)は簡単ではありません。
まずは、初回購入ハードルを下げることがポイントです。「無料お試し」「期間限定100円モニター」などで見込み客を集め、そこから定期購入に導くツーステップマーケティングを実践しましょう。
5-5. リピート・定期購入につなげる
単品通販を成功させるためには、リピートや定期購入が重要です。
新規顧客数を増やすための取り組みだけではなく、「1回限り」の顧客をどうやってリピート購入、定期購入につなげていくかも同時に考えていく必要があります。
定価よりもお得な定期購入価格の設定、ダイレクトメールやメールマガジンによるクーポンの発行など、「顧客が買い続けたくなる」施策を実行しましょう。
5-6. クロスセル・アップセル
リピーター育成と合わせて、客単価を上げる取り組みも大切です。
クロスセル(購入を検討していた商品とは別の商品を提案し併せ買いしてもらう)やアップセル(購入を検討していた商品や以前購入した商品より高額な商品を購入してもらう)などの取り組みも、戦略的に行っていきましょう。
クロスセルやアップセルはLTV(顧客生涯価値)の上昇につながります。
5-7. 成功事例
ここからは、化粧品ECの成功事例をご紹介します。
FUJIMI
「FUJIMI(フジミ)」は、日本初のパーソナライズサプリのサブスクリプションサービスです。
FUJIMIは、肌診断の結果によって顧客に合わせたサプリメントを提供。新しいものを見出すのが難しいといわれるサプリメント市場ですが「自分のためのサプリメントをおすすめしてくれるサービス」として多くの消費者から支持されています。
MEDULLA
「MEDULLA(メデュラ)」はオンラインで髪質診断を行い、約5万通りの組み合わせから顧客一人ひとりの髪質に合ったオリジナルのシャンプーとトリートメントを提供。2018年5月のローンチから順調に顧客数を伸ばしています。
BULK HOMME
男性向け化粧品の「BULK HOMME(バルクオム)」はUGCを積極的に活用した戦略を行っています。
顧客がInstagramに投稿した商品写真を広告のクリエイティブとして活用。Instagramのタイムラインにも馴染む顧客目線の広告クリエイティブで、効果を上げています。
6. 単品(食品)通販のEC戦略
ここからは、単品(食品)通販のEC戦略や成功事例をご紹介します。
6-1. EC化率の低さを活かす
新型コロナウイルス感染症の影響により、物販系分野のいずれのカテゴリーにおいても市場規模が大幅に拡大しています。
しかし、経済産業省が取りまとめた「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、全体のEC化率が8.08%であるのに対し食品分野は3.31%と、EC化が遅れています。
一方で、食品分野は市場規模が大きく、近年ではネットスーパーも浸透してきています。伸びしろの大きい分野であるため、これを活かしてEC戦略を立てていくといいでしょう。
6-2. 物流面の徹底(品質・鮮度)
食品を取り扱う場合、品質や鮮度など物流面の徹底が非常に重要です。特に、生鮮食品の場合は鮮度が重視されます。
鮮度を保ちつつ配送エリアを拡大するには食品に特化した独自の物流拠点の構築などが必要になり、コストがかかるため、物流システムやアウトソーシングサービスを活用するのも一つの方法でしょう。
【関連記事】
EC物流代行・アウトソーシング業者の比較ポイント5つを徹底解説
6-3. サイトの利便性・特徴の強化
ボタン一つで欲しい物が届くのはECの強みですが、食品の場合、実店舗の方が利便性が高い傾向にあります。
実際に商品を手に取って見られない不便さを改善し、近所のコンビニやスーパーではなくECを利用したいと思えるような「ECサイトの利便性や特徴」がなければ利用してもらうことは難しくなります。
一方で、ECだからこそできることもあります。
「棚に限りがなくニッチな商品を取り揃えることができる」「魅力的な画像や動画を使って商品・サービスの背景にあるストーリーや価値を伝えられる」「24時間365日販売できる」などは、実店舗を持たないECだからこそできる強みです。
このような強みを活かせるような戦略を立案しましょう。
6-4. 定期便やサブスクの活用
高級品以外の食品は単価が低く、利益率も低くなります。このような点をカバーするため、食品のEC戦略では定期便やサブスクを活用しましょう。
定期便限定の割引価格の設定、次回利用可能なクーポンや会員特典、キャンペーン実施など継続的に商品を購入してもらうための工夫が大切です。
6-5. 成功事例
ここからは、食品ECの成功事例をご紹介します。
BASE FOOD
「BASE FOOD(ベースフード)」は、完全栄養食のサブスクを行う企業で、1食で必要な栄養素をバランスよく摂取できるパンや麺を販売しています。
SNSでの効果的な広告や、2021年3月から開始したコンビニ販売によって、サブスクの利用者が大きく増加。2022年2月には月間定期購入者数が10万人を突破しています。
ZENB
ミツカングループが展開する「ZENB(ゼンブ)」では、北欧やロシアなどで食べられている黄えんどう豆を原料にした「ZENBヌードル」が2022年3月までで累計300万食を突破。
これまでにない全く新しい食べ物であるため、ユーザーが商品にリアルに触れられるイベントや取り組みなどさまざまな施策を行い、さらにユーザーとの意見交換を活かして新商品の開発も行っています。
nosh
管理栄養士が監修する弁当を定期宅配するサービス「nosh(ナッシュ)」。メインの客層は35〜45歳の女性でしたが、コロナ禍の影響によって20代女性顧客も急増。
アフェリエイトの活用に成功しており、2018年5月のサービス開始から2022年6月までで、累計販売数3000万食を達成しました。
oisix
生鮮食料品の定期宅配を行うブランドの「oisix(オイシックス)」は、「手間は省きたいが手抜き感は出したくない」という食卓の担い手のニーズを反映し、時短調理ができるミールキットを販売。
2013年〜2021年3月までで累計8,000万食売り上げています。
7. AnyMindがECサイトの戦略策定をサポート!
競争の激しいEC業界で売上を高め、事業を成長させるためにはEC戦略の立案が重要です。業界や取り扱う商品・サービスによっても最適な戦略は異なるため、自社に合った効果的な戦略を練りましょう。
AnyMindでは、豊富な経験と実績を活かしEC事業を全面的にサポート。EC戦略の立案はもちろん、事業を支援するソリューションも提供しています。
効果的なEC戦略を立てたい、自社に合ったEC戦略の立て方がわからないなどのお悩みがありましたらぜひ「AnyMind Group」にご相談ください。
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