物流代行業者は、その業務内容によって3PL・4PL・フルフィルメントなど様々な形態があり、システム提供・倉庫の在庫保管機能・配送機能・人的リソースを包括したサービスが基本となっています。
自社のフェーズや戦略、取り扱っている商材特性によってサービス選定ポイントの優先順位は変わって来るため一概に優先順位はつけられませんが、ポイントはシステムの機能、オペレーションの品質、システムとオペレーションの柔軟性、費用、サポート体制の5つに分けられます。
例えばアパレルの場合は特にSKUが多くなり倉庫管理が複雑化しやすいため、倉庫オペレーションの品質が重要になってきます。
【ポイント1】システムの機能
EC物流にシステムは必須で、物流代行業者は自社でクラウド型物流管理システムを開発していることがほとんどなので、そのシステムに使いたい機能が完備されているか・実現できるかは最も重要視したいポイントです。
日本のEC物流オペレーションの品質は世界でも高い水準となっており、慎重に選定さえ行えばどこも高品質なサービスを提供してくれますが、システムの機能はそうはいきません。
例えば自動化を進めやすい受注〜出荷連携の場合も、システムが接続しているECカート・ECモールによっては外部のOMS(受注管理システム)を自社で追加契約して繋ぎこむ必要があったりと、導入後の利便性にダイレクトに影響してしまいます。コストを抑えることも重要ですが、使いたい機能が実装されていないシステムの利用により、継続的な売上向上を妨げる要因となってしまっては元も子もありません。
クラウド型物流システムの機能は、受注管理・在庫管理・出庫管理と大きく3つの機能に分けられます。それぞれ注意したいポイントを見てみましょう。
- 使用したいECカート・ECモールと接続されており、受注情報の自動取込が可能か?
↳使用したいECカート・ECモールと接続されていない場合、システムの機能開発を待つしかなくなるため
- 各受注ステータス別に管理が可能か?
↳対応が必要なステータスの件数管理や対応自体を効率的に行うため
- SKUカスタマイズでどこまで商品情報を管理できるか?
↳固有IDで商品情報を管理することで、エクセルなどでの管理から脱却して作業を効率化するため
- セット商品管理が可能か?
↳同じ在庫内でセット商品・単品商品を一元管理できると、セットの元となる単品商品を単品用とセット用とで別々にSKU登録する必要がなくなるため
- 商品コードを自動生成可能か?
↳インストアコードを自動生成して振り分けられることにより、工数を削減できるため
受注管理機能
- 在庫品のステータス別管理が可能か?
↳商品生産や販売計画を最適化するため
- ロット別・消費期限別に管理が可能か?
↳品質劣化商品の出荷によるブランド毀損リスクを回避するため
- 複数ECカート・ECモールへの在庫の自動反映が可能か・タイムラグはどれくらいか?
↳オンラインとオフラインの在庫数をリアルタイムに連携して、ユーザーの購買機会損失を防ぐため
- 返品商品の在庫計上は可能か?
↳toCのD2Cブランドで多い返品商品を検品し在庫として計上して、効率的に一元管理するため
在庫管理機能
- 出庫・出荷管理機能が搭載されているか?
- 伝票分割が可能か?
↳在庫状況に合わせた柔軟な出荷により、顧客満足度を向上させるため
- 到着日の指定が可能か?
↳購入者が希望している受取日・受取方法をまとめて管理するため
- 支払い方法の多様性があるか?
↳現金主義の日本では代引きがEC決済方法の20%弱を占めており、対応できるだけで購入率向上が望めるため
- 伝票の自動発行が可能か?
↳配送伝票の自動生成により工数を削減して出荷スピードの向上に繋がるため
- 追跡番号の自動反映は可能か?
↳追跡番号を連携して自動でユーザーへ共有できることにより、オペレーション工数の削減と購入者の満足度向上に繋がるため
- 同梱物の指定が可能か
↳ブランドのブランドストーリー・ブランディング・販促施策に合わせてステッカーやメッセージカードなどをシステム上で同梱指定することで効率化と満足度向上に繋がるため
出庫管理・出荷管理機能
【ポイント2】物流品質
物流品質は、保管・梱包・配送と3つの要素で構成されると言われており、配送業者の対応も含まれますが、特に倉庫のオペレーションが大きく影響してきます。PPM(Parts Per Million:パーツ・パー・ミリオン)でも測定できる「誤出荷率が低い」「購入者指定の受取日時・受取方法でお届けできている」「商品が配送中に潰れたり型崩れを起こしていない」ということであれば物流品質が高いと言えます。
厳密にはこのように下記のように6つに分類することができます。
- 商品の指定日時やお届け方法を遵守できているか
- 商品の品質劣化(変形・変質・ホコリ・サビ・腐敗・汚れ・破損も含む)を防げているか ↳倉庫保管時と配送時の商品管理環境の整備や、特に商品が食品の場合は作業スピードも影響してきます。
- 指定商品を指定住所に正確にお届けできているか ↳誤出荷率・PPMの低さでも測定可能。ピッキング作業で起こりやすい。
- 交通事故などを含む人身的な事故を起こしていないか
- 温室効果ガスの削減など、環境への貢献水準がどれくらいあるか
- ドライバーの運転マナーや商品お渡し時の気持ちよさなど、好印象水準がどれくらいあるか
納期品質
商品品質維持品質
正確性品質
事故防止品質
環境貢献品質
印象品質
歴の長い倉庫でも、EC物流経験が浅い場合はこうした「誤出荷率(PPM)の低さ」「安定した出荷スピード」「波動対応」などが安定的に実現できない場合もあり、実績や経験は要確認ポイントとなります。
【ポイント3】柔軟性
代行業者サービスとしての柔軟性に加え、提供サービスに内包されているシステム・倉庫・配送の柔軟性も重要となります。自社ブランドの差別化のために購入者に対して独自性のあるサービスを提供するのは大切ですが、そのために発生する作業は外注することになるため、どこまで対応してもらえるのかという柔軟性は要確認ポイントです。
- 機能開発にどこまで対応してくれるか(基本的にはどこも対応が難しい)
- 保管場所の倉庫見学に対応してくれるか
- 事業成長・季節変動・キャンペーン実施による大量注文などの「波動対応」にどれくらい対応してくれるか
- 特別な機械が必要な「流通加工」にどこまで対応してくれるか
- 「当日出荷・翌日出荷」や土日祝などの「希望稼働日」にどこまで対応してくれるか
- 指定日・指定お届け方法で配達してくれるか
システム
倉庫
配送
【ポイント4】サポート体制
サービス導入後にどのくらいのサポートを受けられるのか、物流に関してどのくらいノウハウがあるのかも重要なポイントとなります。
- システム導入後にも代行事業者とは継続的にコミュニケーションを取っていくことになるため「コミュニケーションツールは何か」「返信スピードは早いか」「サポート担当が物流ノウハウがあるか」「コミュニケーションは気持ちいいか」などは重要視されている方が多いです。
- 越境対応可能な代行業者が増えてきていますが、越境への対応範囲は確認しておきたいポイントです。例えば決済方法に関して、アジアでは一部地域を除き商習慣・法的制約の影響で大多数がクレジットカードを所有していない現金主義な地域も多いため、代引き導入で購入率を向上させたいものの回収不可リスクもあり代引対応しきれていないECストアもあります。「現地に法人が有るか」「現地の言語対応が可能な人員がいるか」「現地のネットワークがあるか」も確認しておいたほうが良いでしょう。
- 「保管倉庫の見学可否」や「他倉庫からの商品移管時に適切な指示を受けられるか」も確認しておいたほうが良いでしょう。
コミュニケーション
越境への対応
倉庫見学や倉庫移管サポート
【ポイント5】費用
物流にかかる費用は細かく分かれており事業者によって定義がバラバラなことも多いため、比較するためには何に対して費用が発生するのかを事前に押さえておく必要があります。
最近は明朗会計で分かりやすい料金形態をとっている事業者も多いですが、予想していなかった部分で課金されないためにも押さえておきたい課金ポイントをご紹介します。
- 【初期費用・固定費】システムの利用に際して発生する初期費用や固定費用
- 【変動費】入庫数や保管数に対して発生するシステム利用費
- 【変動費】倉庫への商品入庫作業で発生する手数料(料金は入庫方法や入庫頻度で変動)
- 【変動費】倉庫での商品保管時に発生する費用 ↳課金される単位が「商品の個数」「使用パレット数」「使用坪数」のどれになっているのかも確認しておきましょう。保管する商品が小さい場合は、同じ空間でもたくさん保管できるため、商品の個数単位への課金ではなくてパレット・坪課金の方が大幅に費用が節約できます。
- 【変動費】商品の検品時に発生する手数料
- 【変動費】商品を梱包するダンボールなどの梱包資材費
- 【変動費】商品の梱包作業で発生する手数料
- 【変動費】配送会社が商品を配送する手数料 ↳出荷量を担保した価格交渉によりコストダウンを行っている事業者もいるため、自社単体での個別契約時よりも安い場合があります。
- 出荷内容修正手数料
- 返品対応手数料
- 緊急出荷手数料
- EMS手数料
- 複数ピッキング手数料
- ギフトラッピング費用
システム利用費
入庫料
倉庫保管費
検品料
資材費
梱包料
配送代行料・輸送費
その他オプション料
一緒に読まれているコンテンツ
EC物流代行とは?アウトソーシング前に押さえるべきポイントを徹底解説
Oct 5, 2021
フルフィルメントサービスとは?EC担当者は押さえたい業務内容・メリット・比較選定ポイント5つから成功事例まで
Oct 26, 2021
Richill | CX(体験価値)向上と20%のコスト削減を同時に実現!SNS上で物流に関する好反響も
Sep 8, 2021
CityCamp | 物流サービスを複数比較しAnyLogiに即決。優れた物流管理システムと伴走型CSの両立が大きな差別化ポイントに
Sep 22, 2021