スマートフォンの普及やその他昨今のトレンドにより、自社ECサイトの利用率は年々伸び続けています。特に2020年以降は、コロナ禍における外出自粛要請の影響で消費者活動が大きく変わり、さらにプライバシー保護の観点ではサードパーティークッキーの使用ができなくなるなど、顧客と直接接点を持てる自社ECサイトはこれまで以上に強化しなければならない販路になりつつあります。
一方で、自社ECサイト運営の具体的な業務内容については馴染みのない方も多いのではないでしょうか。自社ECサイト運営の業務は複雑多岐にわたるため、いざ始めようとしたときに戸惑ってしまう担当者は多いものです。
本記事では、自社ECサイト運営について具体的な業務内容や求められるスキル、よくある課題について一挙ご紹介します。
この記事でわかること
・自社ECサイトの基礎知識
・自社ECサイト運営の具体的な業務内容や必要なスキル
・自社ECサイト運営でよくある課題
こんな方におすすめ
・自社ECサイト運営に関わっている方
・自社ECサイト運営に興味のある方
・D2Cブランドを立ち上げようと考えている方
1. 自社ECとは?
ECサイトとは、インターネットを使って商品を取引できるWebサイトを指します。ECとはインターネット上で行われる売買を意味する「電子商取引(Electronic Commerce)」の通称であり、電子取引ができるWebサイトを総称してECサイトと呼ぶことが多いです。
他にも「通信販売」「ネット通販」「インターネットショッピング」などとも呼ばれています。
1-1. ECサイトと実店舗の違い
ECサイトと実店舗は、対象となるユーザーや強みが異なります。それぞれの違いを押さえたうえで販売戦略を立てないと、思うように利益が上がらない事態にもなりかねません。
主な違いは以下の表の通りです。
ECサイト
実店舗
販売場所
オンライン:インターネット上の店舗
オフライン:実際の店舗
販売時間
24時間365日
営業時間のみ
対象ユーザー
インターネットを利用できる方
実店舗まで行くことができる方
接客方法
電話、メール、チャットなどのカスタマーサポート
スタッフによるリアル接客
集客方法
SNS、SNS/Web広告、SEO対策など
SNS、SNS/Web広告、SEO対策に加え、チラシや新聞の広告など
決済方法
クレジットカード決済、コンビニ決済、銀行振込など
現金、クレジットカード決済、電子マネー決済など
商品の届け方
配送
直接手渡し、配送
他店との価格比較
簡単
難しい
使用感チェック
基本不可能
可能
このように、ECサイトと実店舗にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
実店舗の強みは、実際に商品を試したり販売スタッフから詳しい説明を受けたりすることができる点です。
一方で、ECサイトは「いつでも」「どこでも」「好きなタイミングで」商品を購入することができ、実店舗よりも気軽に購入ができる点が強みです。ただし、他店舗と価格比較されやすいなどのデメリットもあります。
重要なのは、ECサイトと実店舗の特性を活かした販売戦略をとることです。例えば、ユニクロではECサイトで購入した商品を実店舗で受け取ることができるようにしたことで、ユーザー側の送料負担軽減と店舗でのついで買いを実現しています。
またD2Cブランドであれば、ユーザーは「商品」の価値そのものに加え、ブランドコンセプトへの「共感」や体現されたコンテンツの「体験」も含めてファンになっている場合が多く、直接ファンと繋がれる自社ECサイトは有効な販売チャネルとなります。
1-2. ECサイトのビジネスモデルによる分類
自社ECサイトを開設する前に、どのようなビジネスモデルがあるのかおさらいしておきましょう。
■BtoB
BtoBは「Business to Business」の略称であり、企業間取引を指します。BtoB型のECサイトは、主に受発注/請求などの業務効率化と販路拡大のために活用されます。種類は「クローズ型」と「スモールB型」と呼ばれる2つがあり、対象となるユーザーが異なります。
「クローズ型」は既存取引先が利用する自社ECサイトであり、IDやパスワードなどにより制限がかけられる仕様です。
「スモールB型」は見込み客が訪問する自社ECサイトであり、誰でもアクセスできる仕様です。通常の営業活動では接点をもつことが難しい顧客にもアプローチできるため、効率的に新規開拓を行うことができます。
■BtoC
BtoCは「Business to Consumer」の略称であり、企業が販売する商品を消費者が購入するという最も一般的な形です。消費者個人が利用するAmazonなどのショッピングモールや、ユニクロなどの自社製品を販売する自社ECサイトなどがあります。
最近では、スマートフォンから商品を購入する消費者が増えているため、モバイルフレンドリーなサイト構成を考える必要があります。
■CtoC
CtoCは「Consumer to Consumer」の略称であり、消費者間で行われる取引を指します。代表的なCtoCのECサイトとしては、メルカリなどのフリマサイトやヤフオクなどのオークションサイトなどがあります。
個人が所有するさまざまな資産が取引の対象となり、「有形商材」だけでなくスキルなどの「無形商材」も取引される点が特徴です。BtoBやBtoCより市場規模はまだ小さいですが、急速に拡大しており今後も伸び続けると考えられています。
1-3. ECサイトの種類
ECサイトは自社ECサイトとショッピングモール型ECサイトの大きく2種類に分かれます。それぞれの特徴についてご紹介します。
■自社ECサイト
自社ECサイトは、企業が自社の店舗をネット上に設けたものと理解するとわかりやすいです。ユニクロや無印良品などをはじめBtoCのイメージが強いですが、BtoBでも利用されています。BtoBではアスクルやモノタロウなどが有名です。
ビジネスモデルがBtoBかBtoCによって、サイトに必要な機能も異なっており、例えばBtoBであれば自動見積もり機能や承認フロー機能が必要になります。
また、サイトを構築する方法はいくつかあり、自社に合う手段を選択することが重要です。
構築方法 | サイト年商目安 | 初期費用目安 | 月額費用目安 | 拡張性 | 製品例 |
---|---|---|---|---|---|
フルスクラッチ | 50億円~ | 約1,000万円〜 | 数十万円〜 | ◎ | – |
ECパッケージ | 1億円〜 | 500万円〜 | 10万円〜 | ○ | ecbeing/コマース21 |
クラウドEC(SaaS) | 1億円~ 20億円 | 300万円~ | 10万円~ | ○ | メルカート / ebisumart / Makeshopエンタープライズ |
ECオープンソース | 1〜5億 | なし | 10万円〜 | ○ | EC-CUBE |
ECカート・ASP | 〜1億円 | 0〜10万円 | 0〜数万円 | △ | Makeshop / FutureShop / BASE / STORES |
■ショッピングモール型ECサイト
モール型ECサイトは、楽天市場やAmazonなど元々集客力のあるECサイトで「ECモール」「ECマーケットプレイス」とも呼ばれています。会社でも個人でも、自分たちのネットショップをそのECモール上に出店することができます。
総合的なタイプからカテゴリに特化したタイプまで様々なショッピングモールがあります。
<総合ECモール>
・Amazon
・楽天市場
・Yahoo!ショッピング
・Lazada
<カテゴリ特化型ECモール>
・ファッション:ZOZOTOWN
・ファッション:CROOZ SHOPLIST
・美容/コスメ:アットコスメショッピング
ECサイトの種類は使用用途や商材によってさらに細分化することもでき、それぞれの特徴に合った機能の実装やデザインも必要になってきます。
越境展開まで視野に入れるのか(越境EC)、商品は単品で定期・サブスクリプション型で複数回使用してもらうのか(単品通販)、複数商材をブランドとして統一した形で販売するのか(総合通販・D2Cブランド)、ダウンロード型の無形商材か(ダウンロード販売型)、複数のECサイトを展開するのかなど様々な目的を考えたうえで最適なECサイトを選択しましょう。
■越境EC
■単品通販
■総合通販
■定期販売
■ダウンロード販売
■マルチチャネル型
など
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2. EC業界の現状
需要が高まり続けるEC業界ですが、いつまでこのトレンドは続くのでしょうか。これからECサイトを展開する方にとって、業界の伸び代は気になるところです。ここからはEC業界の現状についてご紹介します。
2-1. 市場規模
2021年に経済産業省が発表した電子商取引に関する市場調査によると、BtoCのEC市場規模は19兆2779億円で前年比0.43%減、BtoBのEC市場規模は334兆9000億円で前年比5.1%と両方ともに前年より下がっています。
ただし、内訳を見ると物販系分野が伸長率21.71%、デジタル系分野が伸長率14.90%、サービス系分野が伸長率▲36.05%であることからサービス系分野の落ち込みが大きく影響していることがわかります。
調査対象となった2020年は、コロナ禍での外出自粛要請により飲食や旅行などのサービス系分野に大打撃を与えました。一方で、物販系分野とデジタル系分野は巣ごもり需要により急激に成長して、サービス系分野の落ち込みと相殺されています。
結果としてEC業界全体の市場規模はやや縮小しましたが、コロナ禍というイレギュラーな環境要因の影響が大きいためサービス系分野の落ち込みは徐々に回復し、さらに物販系・デジタル系分野ではECでの購入に慣れたユーザーが多く、今後市場規模はさらに勢いを増して成長すると言われています。
2-2. なぜこれほど盛り上がっているのか
今や私たちの生活に欠かせない存在となっているECサイトですが、なぜこれほどEC業界は盛り上がっているのでしょうか。
大きな要因の1つは、スマートフォンの普及です。2019年に経済産業省が発表した電子商取引に関する市場調査によると、スマートフォン経由のEC市場規模は2015年から約5,000億円増加で推移し続けています。
加えて、InstagramなどのSNSユーザーが急増していることも市場の拡大を後押ししている要因の1つでしょう。
国内外問わず数多くのECサイトが誕生し、EC業界は活性化しています。数十万店舗が出店しているショッピングモール型ECサイトも少なくはなく、多くの企業がEC業界へ参入していることがわかります。
3. 自社ECサイト運営の業務内容
ここからは自社ECサイト運営の業務内容についてご紹介します。自社ECサイト運営の業務は、実際は膨大な量の業務が密接に関わっていますが、マーケティングなどの企画系業務であるフロントエンド業務と、フルフィルメントと呼ばれる管理系業務のバックエンド業務の2つに分けて説明できます。
3-1. フロントエンド業務(企画系業務)
ECサイト業務の中でも、マーチャンダイジング(MD)とマーケティングを担うのがフロントエンド業務です。
通常、フロントエンドとは「Webサービスのうちユーザーの目に触れる部分の開発」を意味するIT用語です。これが転じて、自社ECサイト運営では商品企画や販促施策などのマーケティング関連業務をフロントエンド業務と呼びます。
具体的な業務は以下のようなものがあります。
■MD:商品企画・開発
サイト運営で最も重要な業務の1つが商品企画です。自社ECサイト運営で利益を拡大するためには売れる商品の開発が必要です。
トレンドや季節のイベントなどに合わせて、ユーザーが求める商品を企画/開発することで商品が売れやすくなり、集客の負担も減らすことができます。
■MD:在庫管理(メインは生産/仕入れ業務など)
販売計画に基づいて、商品の製造と仕入れを行います。余分に在庫数を抱えてしまったり、逆に在庫が切れて販売機会を失ってしまったりしないように発注/発送状況を見ながら慎重に調整します。
このような欠品せずかつ過剰在庫にならない適正な在庫数のことを適正在庫と呼び、自社ECサイト運営において適正在庫を保つことはとても重要です。
適正在庫について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
適正在庫とは?在庫管理に不可欠な適正在庫の考え方や求め方、安全在庫との違いまでご紹介
Oct 7, 2021
また、商品の製造や仕入れにかかる時間を見込んで綿密なスケジュール設計を行うことも重要です。特に季節ものの商品は半年以上前から企画しないと発売日まで間に合わない事態にもなりかねません。
■MD:プライシング
商品の価格を設定する業務です。原価や販促費、競合との価格優位性などを複合的に考慮しながら、しっかりと利益を生む価格になるようにします。
また、売れ残り品などの過剰在庫を抱えてしまっている場合にはセール価格にして売り切るなどの調整もプライシングの1つです。
■マーケ:集客施策企画(キャンペーン企画)
売れる商品を作っても集客ができなければ売上には直結しにくいです。期間限定セールやポイント還元セール、プレゼントキャンペーンなどを打つことで、売上の向上だけでなく新規顧客の獲得や休眠顧客の呼び戻しなどの効果も期待できます。
■マーケ:広告運用
ECサイトにおける重要な集客施策の1つが広告運用です。ECサイトではWeb広告と呼ばれるインターネット上の広告を出稿するケースが多く、以下のような広告がよく利用されています。
・リスティング広告
ユーザーが検索したキーワードに連動して、検索結果画面に掲載されるテキスト広告です。
・ディスプレイ広告
Webサイトやアプリケーションの広告枠に表示される広告です。
・アフィリエイト広告
アフィリエイターにWebサイトやSNSなどで商品の紹介をしてもらい、ユーザーが紹介ページに貼られた広告をクリックしたり商品を購入したりしたら成果に応じた報酬を支払う広告です。アフィリエイターは個人が副業で行っている場合もあればメディアを持つ企業が事業の一環として行っている場合もあります。
・ダイナミック広告(PLA)
ユーザーの行動状況に合わせて最適なクリエイティブ表示を行う広告です。例えば、閲覧はしたものの購入まで至らなかった商品や購入した商品の関連商品などを表示することでユーザーの購買を促進することができます。
■マーケ:SNS運用
今やSNSは情報収集にも使われており、SNSが商品を知るきっかけになるというケースはかなり増えています。
Facebook広告などのSNS広告を配信したり、インフルエンサーを起用してプロモーションを行ったりすることが主な業務内容です。
最近では、SNS上で決済まで完結できるソーシャルコマースというビジネスモデルも活性化しています。
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■マーケ:ECサイト改善(デザイン・構築/制作・SEO対策含む)
ECサイトの改善もフロントエンド業務に含まれます。ユーザーにとって利便性の高いサイトにすることで、サイト内の回遊率をあげ購買率(CVR)をあげるための改善が必要です。
ECサイト改善のために取り組むべきこととしては以下のようなものがあります。
・導線の変更(サイト内レコメンド機能含む)
サイトへの流入数が増えても、コンバージョンまでの導線が適切に設計されていないと売り上げ向上には繋がりません。導線が丁寧に設計されたサイトはコンバージョンが増えるだけでなく、リピート率や滞在時間にも良い影響を与えます。
訪問者に適した商品をレコメンドするための機能なども非常に重要です。
・サイト高速化
Googleの調査によると、Webページの読み込みに3秒以上かかると53%のモバイルユーザーがサイトから離脱することがわかっています。ユーザーが快適に買い物を続けるようにするために、サイト高速化は必須の施策です。
また、ユーザーの利便性が高いサイトは検索エンジンに評価されやすいため、SEO対策にも繋がります。
・コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、ブログ記事やメルマガ、SNSなどでユーザーが求めている情報を提供することでWebサイトへの流入数を増やす施策です。Web広告と比べると即効性は低いですが、結果的に安価で行うことができます。
・SEO対策
SEOとは「Search Engine Optimization」の略称で、Webサイトが検索結果で上位表示されるようにする施策です。Googleをはじめとする検索エンジンは、ユーザーにとって有益なWebページを検索結果の上位に表示させる仕組みになっています。
ユーザーが欲しい情報を詳しく解説したコンテンツの発信や、モバイルフレンドリーなサイトの設計などさまざまな面でサイトの改善を図ることが必要です。
■マーケ:その他販売促進業務
自社ECサイト運営のマーケティング業務は、上記でご紹介した業務以外にも多岐に渡ります。具体的には以下のような施策があげられますが、実際にはこれら全ての施策を同時に進めるわけではなく戦略に沿って必要な施策を実施します。
・インフルエンサーマーケティング(ギフティングなど)
自社ECサイト運営で重要な販売チャネルの1つがSNSです。特に、数多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーを起用したインフルエンサーマーケティングは、今大きな注目を集めています。
一般的なインフルエンサーマーケティング施策はギフティングです。インフルエンサーにPRしてほしい商品を無料及びお金を払い提供し、SNSで紹介してもらうことで、認知拡大や新規購入を期待することができます。
インフルエンサーが実際に使用した口コミとして投稿するため、ユーザーも商品に対してポジティブな感情を持ちやすく購入に繋がりやすい点が特徴です。
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・CRM運用
CRMとは「Customer Relationship Management(顧客管理)」の略称です。自社ECサイト運営では、既存顧客にいかにリピートしてもらえるかが重要です。
一方で、膨大な顧客数を抱える自社ECの担当者が、顧客一人一人のニーズに合うような提案を行うことはほぼ不可能です。そこで、CRMをシステム化することで、顧客のデータを分析し最適な提案ができるようにしたものがCRMシステムです。
メールだけではなく、SNSの中でも日本人の普及率が特に高いLINEと連携してメッセージを送れるシステムもあります。ECサイトの運営業務には、このCRMシステムの運用も含まれます。
・メールマーケティング
メールマーケティングは昔からあるマーケティング施策ですが、SNSが普及した今でも十分効果が期待できます。
メルマガ登録をしたユーザーに対して、新商品の入荷情報やキャンペーン情報などのリピート購入を促すメールや、購入後のサンクスメールなどがあります。パーソナライズされたメールマーケティングを行うことでより高い販促効果が期待できます。
・同梱物の作成/カスタマイズ
同梱物とは商品と合わせて発送する挨拶状や商品カタログなどの総称です。商品と同じパッケージに梱包されているため、商品の開封時にほぼ100%の確率で顧客に見てもらうことができます。
クロスセルを狙うのであれば商品カタログやサンプル商品、リピートを狙うのであれば定期便の案内など同梱物を送る目的によって内容を変える必要があります。
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・ポップアップイベント
ポップアップイベントとは、路面の空きスペースや店舗の一部を利用して、期間限定で出店するオフラインのイベントです。ECサイトは、購入前に実際の商品を見ることができないという弱みがありますが、ポップアップイベントに参加すれば弱みを解消することができます。
また、期間限定で話題性があるため、通年で実店舗を運営するよりも効率的な集客が見込めます。
・アライアンス
他の企業と業務提携を結ぶことをアライアンスと呼びます。技術や人材など自社だけでは賄えない経営資源を共有することで、競争力を高めることが期待できます。
特に自社ECサイト運営事業者は急増しているため、競争を勝ち抜くにはアライアンス提携も有効な手段です。
3-2. バックエンド業務(管理系業務)
ECサイト業務のうち、ささげやカスタマーサポート(CS)ECサイトの保守運用、物流業務などがバックエンド業務にあたります。
通常、バックエンドとは「Webサービスのうちユーザーの目に触れない部分の開発」を意味するIT用語です。これが転じて、自社ECサイト運営では受発注管理や物流管理などの管理系業務をバックエンド業務と呼びます。
具体的な業務は以下のようなものがあります。
■ささげ(撮影・採寸・原稿)
ささげとは「撮影」「採寸」「原稿」の頭文字をとった造語です。ECサイトに掲載する商品の写真やサイズ表記、紹介文などの商品に関する情報を集めるために必要な3つの工程を指します。
ECサイトでは、ユーザーは購入前に商品を見ることができません。そのため、ユーザーが可能な限り商品の具体的なイメージを持つことができるように、見た目やサイズなどをわかりやすく伝えることが求められます。
また、撮影時のモデル起用業務なども含まれます。
■ECサイト保守運用(商品登録含む)
ECサイトは開設したら終わりではなく、ユーザーが安心して快適に利用できるように保守運用を行う必要があります。具体的には、商品登録やセキュリティ対策、トラブル対応などがあります。
ただし、モールやASP/クラウドを利用してECサイトを構築した場合には、保守運用業務は商品登録など最低限で済ませることが可能です。
■CS:受注管理
受注管理とは注文内容や在庫の確認など受注に関わる一連の業務を指します。主な業務は注文書の確認/入力や在庫確認、注文請書や伝票の作成などがあります。
これらをエクセルや紙などのアナログな手法で管理しようとすると人的ミスに繋がってしまうため、OMSなどのシステムを導入することがおすすめです。
OMSについて詳細はこちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
EC運営で抑えるべきOMS(オーダーマネジメントシステム)の重要性からメリット、選定ポイントまでご紹介
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■CS:在庫管理(倉庫にある在庫数を把握する)
在庫管理とは倉庫にある在庫の棚卸しを行い、適正在庫を保つことができるように入出荷を調整する業務を指します。過剰在庫が起きている状態は、仕入れのコストが回収できていないことを意味します。
利益を適切に把握するためにも在庫管理は重要な管理業務です。
在庫管理について詳しい内容はこちらの記事でもご紹介しています。
在庫管理とは?基礎知識から具体的に必要な3つの活動をご紹介
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■ロジ:倉庫オペレーション(入庫・保管・検品・梱包など含む)
倉庫オペレーションとは、倉庫内の入出庫や保管にともなう業務です。主な業務はピッキングや梱包作業、保管や入出庫時の検品などがあります。
なお、倉庫オペレーションの各工程について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
EC物流倉庫の業務プロセスとは?D2Cブランド担当者が押さえておきたい8つの業務をご紹介
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■ロジ:出荷管理
出荷管理とは受注した商品をミスなく出荷するために、出荷前の準備や出荷後の記録を管理する業務です。具体的な業務としては出荷指示書の作成や売上伝票作成、取引の記帳などがあげられます。
■CS:顧客管理
顧客管理とは、入金確認メールや配送/出荷完了メール、問い合わせ対応などを指します。フロントエンド業務のCRM担当者が受けもつことが多いですが、自社ECサイト運営の裏方業務に含まれるものとしてバックエンド業務に分類されることもあります。
バックエンド業務担当者が一連の物流業務と合わせて管理することで、物流品質をより保ちやすくなるでしょう。
■CS:カスタマーサポート
カスタマーサポートとは、電話やチャット、メールなどを使って顧客からの要望や問い合わせに対応する業務です。直接顧客と接点を持ちにくいECサイト事業者にとって、顧客の生の声を聞くことができるカスタマーサポートは重要な業務です。
また、問い合わせ時の対応レベルが高いと、顧客満足度の向上も期待することができます。
4. 自社ECサイト運営に必要なスキル6つ
自社ECサイト運営の業務はフロントエンド業務からバックエンド業務まで多岐にわたります。これからECサイト開設を検討している方の中には、どれほどのスキルが必要なのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。
自社ECサイト運営に必要なスキルは幅広いうえにそれぞれの専門性が高いため、1人ですべて行うことは難しいです。複数人で担当するケースもありますが、ECサイトや企業の規模が小さい場合には2~3人で分担して担当しなければいけないことも少なくはありません。
アウトソースするにも業務内容を理解して正しくディレクションする必要があるため、ここからは自社ECサイト運営に必要な6つのスキルについてご紹介します。
4-1. SNS/WEBマーケティングスキル
自社ECで売上を伸ばすためには、「集客数」「CVR」「リピート率」を向上させる必要があり、集客はSNS/WEBマーケティングが中心です。SNSの運用・Web広告、SEO対策などが主な集客施策なので、これらを適切に運用するスキルが必要になります。
特にWEBマーケティングはWebに関する知識やデータ分析、情報収集力など求められるスキルが幅広い点が特徴です。
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4-2. 商品企画スキル
売上拡大の成功要因は、売れる商品であるかどうかということは言うまでもありません。丁寧なカスタマーサポートによる宣伝効果はあくまでも間接的な効果です。売れる商品を企画するためには市場の調査を行いながら対象のターゲットのニーズに合う商品の開発を行います。
また、商品企画だけでなく販売計画や予算管理まで担当するケースが多く、売上を左右する重要な役割です。
4-3. クリエイティブスキル
ECサイトでは、店舗のように商品の魅力をユーザーが直接体験することはできません。そのため、サイト上でどれほど商品を魅力的に見せることができるかがユーザーの購買に大きな影響を持ちます。
ささげやサイトデザイン、バナー制作などのほか、動画制作のスキルもあると重宝されるでしょう。
4-4. 接客スキル
カスタマーサポートでは、問い合わせやクレーム対応を行うので、お客様目線に立って最適な対応ができるスキルが求められます。
4-5. システムリテラシー
ECサイトでは、CRMシステムやMAツール、物流管理システムなどさまざまなシステムを利用します。そのため、システムを扱えるようなITリテラシーが必要となることが多いです。
4-6. キャッチアップスキル
EC業界はトレンドや技術面の移り変わりが激しい業界です。また、成長産業であるため参入してくる事業者も多く、プラットフォームを提供する側も改善を続けています。そのため、自社ECサイト運営の担当者には常に最新の情報をキャッチアップし続ける力が求められます。
5. ECサイトの運営にかかる費用
続いては、ECサイトを運営するためにかかる費用をご紹介します。ECサイトは構築費用だけでなく保守運用や広告配信などの費用も必要です。
それでは、費用の内訳についてそれぞれ見ていきましょう。
5-1. ECサイト構築/制作の費用
まずはECサイトの構築/制作の費用がかかります。費用感は構築方法によって大きく異なります。
代表的な4つの構築方法と各費用感は以下の通りです。
■フルスクラッチ
既存のシステムやソフトウェアを使わずに、ゼロからサイトを構築する方法をフルスクラッチと言います。
カスタマイズの自由度が高い点や構築後も柔軟に対応がしやすい点などがメリットです。
一方、構築にかかる初期費用だけでも数千万円もかかったり、開発期間も最短でも1年程度はかかったりします。十分なリソースがある企業でないとフルスクラッチでの開発は難しいです。
近年では、EC事業者の増加にともなって、ECカートシステムも豊富な機能が揃っておりセキュリティ性も高いため、ECカートシステムを利用した構築を制作代行会社に依頼するのが無難です。
■ECパッケージ
ECパッケージとは、ECサイトの構築に必要なシステムや機能が備わったパッケージを利用してサイトを構築する方法です。
フルスクラッチほどではありませんが、カスタマイズ性が高い点が特徴です。ただし、初期費用が数百万円かかったり、場合によっては毎月数十万円のランニングコストがかかります。
また、システムを最新のものに保つため数年ごとに入れ替えが必要になるので、長期的に考えるとランニングコストは高くついてしまいます。
■オープンソース
インターネット上に無料で公開されているECサイト構築システムです。誰でも無料で利用でき、ソースコードも公開されているのでカスタマイズもしやすいなどのメリットがあります。
自社のリソースで構築から保守運用まで賄うことができれば、基本的に費用は無料です。
一方、カスタマイズをするのであれば一定の技術力は必要となります。自社にノウハウがない場合には外注を検討することも多いです。この場合、初期費用が約50万円、保守運用費用が月に数万円から数十万円かかります。
■クラウドEC・Saas・ASP
自社ECサイト運営に必要なシステムや機能がクラウド上で利用できる方法として、クラウドEC/Saas/ASPなどがあります。
自社でサーバーなどを用意する必要がなく、システムも自動で最新版にアップデートされるので、手軽に自社ECサイト運営を始めたい方におすすめです。
代表的な例としてShopifyがあります。費用はプランによって異なりますが最も安いプランなら月額3,000円程度で利用できます。
Shopifyについてはこちらの記事でも解説しているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
Shopify構築費用の相場と内訳は?ショッピファイECサイト制作方法や制作会社の選定ポイントまでご紹介
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5-2. ECサイト保守運用費用
ECサイトを運営するためには初期費用だけでなく保守/運用の費用もかかります。具体的な費用としては以下のようなものがあげられます。
■保守運用費用
ECサイトの構築後も、取り扱う商品やユーザー数が増えると新しい機能を追加したりシステムをアップデートしたりするなどのメンテナンスが必要です。
また、ユーザーの個人情報を扱うため、情報漏洩が起きないような高いセキュリティ性を維持し続けることも求められます。
費用はクラウドECやASPを利用する場合は、利用料金に含まれるため基本的にはかかりません。
一方で、フルスクラッチやパッケージなどで構築した場合には、月額数万円から数十万円程度かかります。
■ECカートなどのECシステム関連費用
ECサイトの運営には、ECカートシステムやASP、ECクラウドなどシステムを利用することが大半です。ベンダーが提供するシステムを利用するには、当然システム利用料金が発生します。
加えて、システムがアップデートするごとに追加費用を支払わなければならないこともあるため、契約時にはアップデート費用がどの程度かかるのかを必ず確認するようにしましょう。
■独自ドメインの取得・SSL更新費用
ECサイトで独自のドメインを利用する場合には、ドメインを取得しなければいけません。独自ドメインを利用すると、サイトの信頼性が高まったり独自ドメインのメールアドレスを持つことができたりするなどのメリットがあります。
費用は初期費用/年間費用ともに数百円から数千円程度なので、ECサイトを運営するならぜひ取得しておきましょう。
また、ドメインの他にも、SSLを更新する必要があり、月額数千円程度かかります。
5-3. 決済代行会社の契約費用
クレジットカード決済やコンビニ決済を導入するには決済機関と契約を結ばなければいけませんが、決済システムの導入や環境構築など意外と手間がかかるものです。
このような面倒な手続きを代行してくれるのが決済代行会社です。かかる費用は初期費用と月額費用、決済手数料などがあります。初期費用が数万円、月額費用が数千円、決済手数料が決済金額の数%かかります。
5-4. 広告配信費用
ECサイトへの集客施策として、広告配信を行うことが多いです。配信する広告の種類や期間によって費用は異なりますが、よく利用されるリスティング広告であれば、商材にもよりますが月額50万程度は見積もっておく必要があります。
5-5. 物流管理費用
物流管理とは商品の品質を維持しつつ、顧客の要望に合うような量や種類、配送時間で商品を届けるために必要な業務全般を管理することを指します。
すなわち、商品の品質管理のみならず、倉庫や人材などのリソースや配達状況などを総合的に管理する必要があります。このような複雑な業務を自社のリソースで賄うのは難しいため、EC物流代行サービスを利用する企業が多いです。
EC物流代行サービスの選定ポイントについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
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6. 自社ECサイト運営でよくある課題
ここからは、自社ECサイト運営でよくある課題を2点ご紹介します。
6-1. 売上が伸びない
まず1つ目の課題が、売上に伸び悩むというケースです。売上が伸びない要因は複数ありますが、大きな要因としては集客力とCV率の低さが考えられます。
特に自社ECサイトの場合は、サイトの認知率が低いため、広告配信やSEO対策などを積極的に行わないと十分な集客が見込めません。
また、集客を増やせたとしてもサイトの設計が甘かったり、商品ページが商品の魅力を十分に伝えられていないとCVには繋がりません。
取り組むべきことは多いですが、一つ一つの要因を見直し改善を重ねることが重要です。
6-2. 業務が上手くまわらない
2つ目の課題は業務がうまくまわらないというケースです。自社ECサイト運営はフロントエンド業務からバックエンド業務まで幅広い業務を行わなければいけません。
企業規模によってはサイト運営担当者が一人の場合もあり、かなりの負担がかかってしまい結局手が回らなくなってしまうことはよくあります。
また、複数人で担当していたとしても、想定していたよりも業務の幅が広くキャパオーバーになることも十分ありえます。
7. 売上を上げるためには?
最後にECサイトの売上を上げるために有効な施策をご紹介します。
7-1. ブランド戦略の社内共有化
ECサイトは、実店舗と比べて他社と競合比較がされやすいという特性があります。この特性を活かして、ブランドコンセプトや商品の見せ方、価格などで競合との差別化を図ることが売上向上の鍵です。
そのため、競合にはない自社商品の強みやブランド戦略、ターゲットなどを明確にし、社内で共通認識を持つことが重要です。全員で戦略を共有することで適切なブランディング、広告戦略などが可能になります。
特にブランドコンセプトが売りのD2Cブランドは、このブランドの価値観が浸透していない場合はそれが顧客接点で顕になり、それが原因でリピートしてくれなくなるという可能性もあります。
7-2. 売れるECサイトの構築
商品の購入に繋がりやすいECサイトにするには、使いやすいサイトにすることが必要です。具体的には、ユーザーが商品を見つけやすく興味も持ちやすいレコメンド機能の実装や、商品紹介ページのブラッシュアップ、購入までの導線をシンプルにすることなどがあげられます。
また、ユーザーがサイトから離脱してしまわないように最低限の表示速度改善も行いましょう。
7-3. マーケティング強化
売れるECサイトを作っても集客できなければ売上は上がりません。広告運用やSEO対策、SNS運用などを強化することで、大きな集客増が期待できます。
そのほか、CRMシステムや同梱物を活用し、既存顧客や休眠顧客の購入を促進する施策も有効です。
7-3. フルフィルメントの効率化
フルフィルメントとは、商品の仕入れから配送、顧客関係構築までに必要なすべての機能と一連の業務プロセスを指します。
ある程度売上が立つまでは内製化で回して、それから効率化すれば良いという方もいらっしゃるかと思いますが、先にプロに委託するなどで効率化しておくほうが貴重なリソースを無駄にせずにすみます。
競争が激化している自社ECサイト運営においては、物流品質も優位性を確立できるポイントの1つです。
なお、フルフィルメントサービスについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。比較選定ポイントもご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
フルフィルメントサービスとは?EC担当者は押さえたい業務内容・メリット・比較選定ポイント5つから成功事例まで
Oct 26, 2021
7-6. フルフィルメントやマーケティングの部分/全体アウトソーシング
フルフィルメントやマーケティングは複雑かつ幅広い業務が求められます。専門性も高いため、これらをすべて内製化できる企業は限られているでしょう。
ノウハウがある専門の業者にアウトソーシングする方が、自社で対応するよりも低コストかつ高品質な運用が期待できます。
全てをアウトソーシングする余裕がない場合には部分的な業務だけでもアウトソーシングできないかを検討してみましょう。
8. EC構築/運用はAnyMindにお任せください
AnyMindでは、自社ECサイト構築のみではなく、自社ECサイトの保守運用、ブランドの商品企画・生産、マーケティング、物流までを一括で支援できるプラットフォームを開発、提供しています。
事例も豊富にありますので、是非ごらんください。
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