ECサイトの売上が伸びない、サイトのシステムや機能を変えたいという悩みの解決策に、ECサイトのリニューアルがあります。
リニューアルでシステム上の問題の解決、新しい技術の追加、流行に合わせたデザインの一新、サイト設計の見直しなどを行うことで、現在の課題・問題解決につながります。
しかし、リニューアルには費用や時間がかかるため、成功させるためには、事前に入念な計画を立てることが大切です。
この記事では、ECサイトのリニューアルを検討すべき要因や具体的な手順、リニューアルを成功させるポイントや注意点について詳しく解説します。
この記事でわかること
・ECサイトをリニューアルすべきか、見極め方
・ECサイトのリニューアルの手順
・ECサイトのリニューアルを成功させるポイント・注意点
こんな方におすすめ
・ECサイトの課題を見つけたいが、どうしたらいいかわからない
・自社ECサイトをリニューアルすべきかわからず悩んでいる
・ECサイトのリニューアルにあたって手順やコツ、注意すべきことを知っておきたい
1. ECサイトのリニューアルとは?
ECサイトのリニューアルは、デザインの一新や新しい機能の追加、システムを新しくすることなどによって、ECサイトの課題や問題を改善することを目的として行われます。
この他にも、サーバーのサポート契約切れといった運用環境の変化への対応、ECサイトの構築や運用を行う外部委託先の変更に伴う変更もリニューアルに含まれます。
ECサイトのリニューアルは、不具合が起きてから行うものではありません。 問題を未然に防ぎ、売上を最大化させるためには、適切なタイミングでECサイトをリニューアルする必要があります。
2. ECサイトのリニューアルを検討すべき要因
では、具体的にどのような場合にECサイトのリニューアルを検討すべきなのでしょうか。ここから詳しく見ていきましょう。
2-1. システムの老朽化でパフォーマンスが低下している
ECサイトのシステムもアプリのようにバージョンがあり、古いままのシステムでは動作が遅くなったり、業務効率が落ちたりします。
インターネット技術は日々進化しているため、導入時には最新だったシステムも時間の経過によって老朽化し、セキュリティが弱くなる、最新技術に対応できなくなるなどのパフォーマンス低下が起こってしまうのです。
特に、オープンソースは頻繁にセキュリティ上の問題が見つかりアップデートが行われています。オープンソースやパッケージを使用している場合は対策が必要でしょう。
2-2. 機能面の不足により作業コストがふくらんでいる
ECサイトに求められる機能は、事業の規模に応じて変化します。
規模が大きくなっていくにつれて商品管理・会員管理・決済管理などの機能面が不足してくると、それをカバーするための作業が増え、作業コストが膨らんでしまいます。
機能面の不足はサイトの更新作業にも影響する部分です。ECサイトは継続的に更新を行う必要があるため、更新しにくい・更新に時間がかかる状況では、業務効率が低下してしまいます。
また、「マーケティング系の機能面の不足により実現したいプロモーションができない」「機能の不足により実行できる施策に制限がある」「外部システムとの連携ができない」などの課題がある場合、競争力の低下を招きます。
2-3. スマートフォン・タブレットに非対応である
スマートフォンやタブレットへの対応は、現代のECサイトにおいて必須のため、対応していない場合は早急なリニューアルが必要でしょう。
スマートフォンやタブレットに対応したECサイトの用意や、各端末の画面サイズに合わせたレイアウトを表示するレスポンシブデザインの導入などの変更を行いましょう。
また、Webサイトがモバイル対応しているかどうかという点は、Googleの検索アルゴリズムも重要視している部分です。Googleはモバイルファーストインデックス(MFI)への移行を発表しているため、自社ECサイトがモバイルフレンドリーであるかどうかチェックしてみましょう。
Googleのページから「モバイルフレンドリーテスト」が可能です。
2-4. ECサイトのデザインを一新したい
ECサイトのデザインのトレンドは日々変わっていきます。流行を取り入れたおしゃれなデザインにするだけではなく、利用者が使いやすい・わかりやすいUI/UXデザインにすることもコンバージョンにつなげるためには重要です。
デザインが古かったり、粗さが目立つ、ブランドイメージと一致しない場合は、滞在時間や再訪問率の低下を引き起こします。
しかし、デザインを変えれば必ず売上が上がるということはありません。明確な問題点を分析し、デザインを変更することが改善策なのか、検討が必要です。
2-5. 売上やKPIの低下
これまでは順調に伸びていた売上やKPIが低下したり伸び悩んでいる場合は、ECサイトのリニューアルも考慮に入れましょう。
業績悪化につながる原因は一つではなく、ECサイトの問題、商品やサービスの問題、集客の問題などが複合的に重なり合って起こります。
ECサイトが原因で売上やKPIが悪化している場合、サイト内のどの部分に問題があるかを具体化し、効果的にリニューアルをしましょう。
3. ECサイトのリニューアル手順
ECサイトのリニューアルは、基本的に以下の7つのステップで行っていきます。
1. プロジェクトチームの発足
2. 現状の課題の洗い出しと目的の明確化
3. KPIを置いたリニューアル計画の策定
4. RFPの作成
5. ベンダーの選定と契約
6. システムの要件定義
7. リリースに向けた運用準備
3-1. プロジェクトチームの発足
まずは、ECサイトリニューアルを進行するプロジェクトチームの発足です。メンバー構成としては、ECサイトの担当者、デザイナー、エンジニア、社外ベンダーなど4〜10名のチームが一般的です。
経営層や管理職など、決裁権限を持つ人物がプロジェクトチームにいると他のメンバーが動きやすくなります。あまり大人数になりすぎると意見がまとまるまでに時間がかかってしまうため、必要最低限の人数に留めるのがポイントです。
メンバーが決まったら、プロジェクトを進行していくオーナーとなる人物を決定します。その際、「最終的な意思決定者」や「最適な承認ステップ」も決めておくと、品質担保やスピード感につなげられます。
3-2. 現状の課題の洗い出しと目的の明確化
続いては、現状の課題の洗い出しと目的の明確化です。自社ECサイトを分析し、売上アップの妨げになっている原因や不足している部分を探りましょう。
このとき、顧客視点・管理者視点の両方の視点から考えることが大切です。
たとえば、顧客視点では、会員登録や購入に関する部分が挙げられます。
一方、管理者視点では、管理画面やシステムの部分に課題があります。考えられる課題をリストアップし、リニューアルの方向性を定めましょう。
3-3. KPIを置いたリニューアル計画の策定
ECサイトリニューアルを成功させるためには、KPIを決め、目標とするリニューアル後のイメージを明確にすることが重要です。
「ECサイトをリニューアルして売上を伸ばしたい」だけでは漠然としていて、具体的に何を追加・変更すればいいのかがわかりません。
・購入までの導線を改善して、売上を20%アップさせる
・Web接客システムやチャットを導入して、解約率を15%下げる
・メルマガを改善してリピート購入率を10%アップさせる など
上記のように数字を伴う具体的なKPIを設定したリニューアル計画を策定しましょう。
3-4. RFP(提案依頼書)の作成
続いては、リニューアルを行う制作会社に提出するRFP(Reqest For Proposal/提案依頼書)の作成です。
なぜリニューアルを行うのか、意図が制作会社に伝わるよう、現在の状況を含むサイトの概要、解決したい課題やリニューアルの目的、最終的なゴール、そのために必要な機能などを漏れなく詳細に伝えましょう。
主に、以下の4点をしっかりと固めておく必要があります。
・目的
・予算
・スケジュール
・構築手段(ASP、フルスクラッチ、オープンソース、パッケージ)
ここで作成したRFPが制作会社の選定や要件定義する際の判断基準となるため、実際にリニューアルに向けて動き出す前に整えておきましょう。
3-5. ベンダーの選定と契約
RFPを作成したら、リニューアルを依頼するベンダーを選定します。要件を満たせそうな会社をピックアップし、見積もりを比較しましょう。
スケジュールや予算だけでなく、「自社の意図を汲み取ってくれるか、話し合いを重ねて同じ目標に向かって進めていけるか」という部分も重要です。
なお、ベンダーにはそれぞれ特徴があります。特定の業種での経験や実績が多い会社もあるため、自社事業やコンセプト、目的にマッチするかどうか調べることが大切です。その後数社でコンペを開き、提案内容を比較検討して、契約を行います。
ベンダーによっては扱えるECカートが決まっている場合もあるので、そのECカートで自社の実現したいことが実装できるのかは注意が必要です。
3-6. システムの要件定義
要件定義は、要望を具体的な要件に落とし込んで認識のすり合わせを行う重要な工程です。
サイト要件とはサイトマップやレイアウト、デザインなどを指します。システム要件には、決済手段や受注管理などの機能面だけでなく、サイト速度やセキュリティ面が含まれます。
これらをベンダーに提示し、話し合いを通して慎重にシステム要件を決定しましょう。
さらに、現在のECサイトでは、どのような流れで受注→処理→配送が行われているかといった業務フローや社内ルールをベンダーに伝え、リニューアルによって効率化できるようにします。業務フローの確認時は、現場に詳しい担当者を含めて打ち合わせを行うといいでしょう。
3-7. リリースに向けた運用準備
システムの要件が確定したら、ベンダーは開発に入ります。その間に、リリースに向けた運用準備を行いましょう。
データ移行 | 顧客・会員データ・商品・受注データ・商品画像などの移行 |
リダイレクト | URL変更を伴う場合は、新しいECサイトにアクセスできるようリダイレクトの設定 |
メールフォーマット | お問い合わせの自動返信メール、注文確認メール、入金確認メール、発送完了メールなどのメールフォーマットの用意 |
運用ルール | リニューアルに伴い変更となった作業の流れに合わせて運用ルールを決定 |
顧客向けのリニューアル告知 | 顧客が戸惑わないよう、事前のリニューアル告知 |
保守管理体制 | リリース後にバグや不明点が生じた場合に、すぐにベンダーとの連携が取れるようにしておく |
顧客が新しくなったサイトに戸惑うことがないよう、リニューアル告知はしっかり行っておきましょう。
4. ECサイトのリニューアルを成功させるポイント
ここからは、ECサイトのリニューアルを成功させるポイントをご紹介します。
4-1. ターゲティングに合わせたデザイン設計
デザイン設計は、自社ブランド・商品のコンセプト・ターゲティングに合わせて行いましょう。
たとえば、ターゲットの年齢層が高い場合は、ECサイトの文字を少し大きくしたり、読みやすい行間にする、背景と文字のコントラストに配慮するなどがあります。
顧客が魅力を感じるデザイン性と、快適にショッピングを楽しめる機能性のバランスを取ることが大切です。
4-2. モバイルフレンドリーなUI/UX設計
近年、EC市場ではパソコンからスマートフォンへの移行が進んでいます。
経済産業省が公表した「令和2年度 産業経済研究委託事業 (電子商取引に関する市場調査)報告書」のグラフを見てみましょう。
スマートフォンの比率は年々増加し、2020年には50%を超えています。このように、現代のECではスマホ最適化が重要です。Googleもモバイル版のサイトを優先して評価していくことを発表しているため、モバイルフレンドリーなUI/UX設計を行いましょう。
4-3. 基幹システムやツールと連携できるプラットフォーム選び
顧客情報や商品在庫データ、広告配信データなどはECシステムのみでは完結できないことがあります。そのため、社内の基幹システムやツールとのAPI連携ができるプラットフォームを選ぶことが重要です。
基幹システムやツールとの連携ができないと、開発費が追加となるなど想定外の費用が発生してしまうため、注意しましょう。
4-4. 将来的なトラフィックを想定したインフラ環境の設定
サイトをリニューアルしたことで、アクセス数が増加した場合、サーバーの負担が大きくなったり、サイト内の動作に影響が出る可能性があります。
これに対応するために、将来的に増加するトラフィックを想定したうえで、サーバーにかかる負荷への耐性や容量などのインフラ環境を見直す必要があります。
4-5. SEO・コンテンツマーケティングでの潜在顧客の獲得
アクセス数アップや潜在顧客を獲得する施策として、SEOやコンテンツマーケティングも有効です。近年はコラムやブログなどの記事をコンテンツとしてサイトに加えるECサイトも増えています。
作成したコンテンツが検索結果で上位表示されると、アクセス数が増加し、ターゲットとなる潜在顧客に効率的にアプローチできます。
また、顧客の役に立つコンテンツを配信し続ければ、リピート率やCVRの改善、顧客ロイヤルティ向上も見込めます。
4-6. セッション数を増加させる広告の最適化とLPO
リスティング広告やSNS広告などのデジタル広告の最適化を行い、セッション数を増加させましょう。
また、LPO(ランディングページ最適化)によって広告のセッションを無駄なくコンバージョンにつなげることができます。
4-7. リニューアル後の成果のモニタリング体制
ECサイトをリニューアルしたら、成果検証を行いましょう。
売上の推移や顧客の動き、リニューアル前に設定したKPIの達成度、問題点は解決できているかなどを監視するモニタリング体制を整え、課題が見つかれば修正を行い、よりよいECサイトに成長させていきます。
5. ECサイトをリニューアルする際の注意点
ECサイトをリニューアルする際には、注意点もあります。リニューアルを成功につなげるためにも、注意点について理解しておくことが大切です。
5-1. 要件定義の漏れやスケジュールの遅延を防ぐ
要件定義は難易度の高い業務であり、トラブルにつながりやすい部分です。必要な機能が設計から漏れたり誤った内容で設計されたり、要件定義が不十分になっていると悪影響はお客様にまで及ぶことになります。
要件漏れを起こさないよう、発足したプロジェクトチーム内でしっかりと要件定義を行い、テスト検証を重ねておきましょう。
要件定義漏れや遅れ、工数見積もりミスは開発スケジュールの遅延につながります。開発工数が想定以上にかかってしまうケースもあり、スケジュールはある程度のバッファを取っておくと安心でしょう。
5-2. リニューアル後のリスクも想定しておく
ECサイトをリニューアルする際は、リスクも想定しておきましょう。
リニューアル時には事前に予算を決めますが、実際には予算を超えるケースもあります。リニューアル内容を具体的に検討している際にやりたいことが増えたり、新たな課題が見えてくると、機能追加・変更が増えて予算をオーバーしやすくなります。
大幅に予算を超えてしまうことがないよう、事前に入念な確認を行い、リニューアル内容を決定しましょう。
また、ECサイトをリニューアルしたからといって、必ずしも売上がアップするわけではありません。リニューアルしたことでサイトが使いにくくなってしまうと、アクセス数や売上が減少する可能性もあります。
計画段階でチームやベンダーとリスクを想定した話し合いを進めましょう。リダイレクト設定によるSEOの引き継ぎには、特に注意が必要です。
5-3. リリース後の顧客対応を円滑にできる体制を整える
ECサイトのリニューアルに伴い、機能や仕様の変更が起きたことで「ログインできない」「過去の購入データが引き継ぎされていない」など、顧客からの問い合わせやクレームが増加することも考えられます。
本番反映前の検証で発生させないのが一番ですが、思いもよらぬところでトラブルが発生する場合もあります。このようなトラブルに円滑な対応が行えるよう、体制を整えておきましょう。
問題が生じた場合でも、スピーディーな解決や復旧ができれば顧客の信頼を損ないにくくなります。
5-4. リニューアルの実績が豊富な制作会社に依頼する
ECサイトは一般的なWebサイトとは異なり、決済や商品検索、顧客データ管理など高機能であるため、サイト構築の難易度が高くなります。
そのため、ECサイトのリニューアル実績が豊富な制作会社を選ぶようにしましょう。
経験やノウハウが豊富な制作会社であれば、もしも要件定義漏れが起きていた場合でも確認やアドバイスをもらえる可能性があります。
6. ECサイトのリニューアルはAnyMindにお任せください!
現状の課題や問題点を改善できるECサイトのリニューアルは、事業を成長させるうえでは避けては通れない、必ず通る道です。
リニューアルを成功させるためには、一つ一つ大切なポイントを押さえ、明確な目的を持って慎重に進めていきましょう。
「AnyMind Group」では、ECサイトの構築からリニューアル、運用や物流に至るまでECビジネスを包括的にサポートしています。
ECサイトのリニューアルを考えている場合はもちろん、リニューアルが必要がどうかわからず悩んでいる場合は、ぜひお気軽に「AnyMind Group」にご相談ください。
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