自社ECサイトの収益を最大化するために、どのようなデータ分析を行うべきか知りたい方も多いのではないしょうか。
ECサイト分析では、セッション数やCVR(コンバージョン率)などの指標に注目し、分析ツールを用いて効率よく課題点を発見し、施策を改善することが重要です。
この記事では、ECサイト分析の進め方や、注目すべき指標、重要ポイントなどを解説します。
この記事でわかること
・ECサイト分析で注目すべき指標
・ECサイト分析の進め方
・ECサイト分析に欠かせないツール
こんな方におすすめ
・ECサイト分析のやり方がわからない
・ECサイトの収益を最大化したい
・ECサイトのコストを最適化したい
1. ECサイト分析の目的とは
ECサイト分析は、顧客行動の傾向やサイトの現状を把握・改善し、収益の最大化やコストの最適化を実現するために行われます。
自社ECサイトで目標とするKPI(重要業績評価指標)の設定から始まり、さまざまな解析・分析ツールを利用して現状の課題を洗い出します。
課題点を改善するための施策の立案と実行、効果測定を繰り返し、目標に設定したKPIの達成を目指すために必要なのが、ECサイト分析です。
2. ECサイト分析で注目すべき指標
ECサイトのデータを収集し分析する上で、注目すべき指標がいくつかあります。
具体的には、セッション数や顧客単価、LTV(顧客生涯価値)など、CV(コンバージョン)につながる指標が挙げられます。
2-1. 売上・利益
売上・利益は、ECサイトの規模を表す重要な指標とされています。
売上は「セッション数 × CVR × 購入単価」で求めることができ、KGI(経営目標達成指標)でも設定されやすい傾向にあります。
1日・1週間・1ヶ月というように、期間を区切って分析を行うことができ、比較的管理しやすい指標です。
2-2. セッション数
セッション数は、特定の期間内におけるECサイトのアクセス数を指します。
どのくらいのユーザー数をサイトに集客できているのかを判断するための指標です。
セッションが、どの流入元から発生しているのかを区別することで、広告やメルマガ配信などの効果測定に活用することができます。
2-3. CVR(コンバージョン率)
ECサイトにおけるCVR(コンバージョン率)とは、商品・サービスの購入率のことです。
以下の計算式でCVRを求めることができます。
「CVR」=「注文数」÷「 セッション数」×「100」
CVRを分析することで、ターゲティング設定や購入の導線が適切かどうかを把握することができます。
CVRに課題を抱える場合、サイト内のどの部分に問題があるか特定し、カゴ落ち対策やUI/UXの改善などを検討しましょう。
2-4. AOV(平均注文単価)
AOV(Average Order Value)とは平均注文金額のことで、顧客1人が1回の取引で支払う平均金額を指します。
「全体売上総 ÷ 注文数」の計算式で求めることができ、顧客ロイヤリティを高める施策やクロスセル・アップセル対策などが、AOVの向上につながります。
ECサイトでは、セッション数・CVR・リピート率などと併せてKPIに設定されやすい指標です。
2-5. 限界利益率
限界利益率は、売上に占める限界利益の割合を指します。
限界利益は、ECサイトの売上から変動費を差し引いた利益にあたり、売上高の増加に伴って増えます。
限界利益率の分析・比較では、商品が適正な価格かどうかを判断でき、変動費・固定費の削減に活かすことが可能です。
2-6. LTV(顧客生涯価値)
顧客生涯価値を意味するLTV(Life Time Value)は、顧客が生涯を通じてECサイトにもたらす利益のことです。
「平均注文単価 × 粗利率 × 注文頻度 × 期間」で求めることができ、LTVの数値から、リピーターを獲得できているかどうかを判断できます。
特に単品通販を行うECサイトでは、チャーンレート(解約率)と併せて重要な指標であり、顧客ロイヤルティを高める施策などでLTV向上を目指します。
2-7. リピート率
商品・サービスが購入された時、2回目以降の購入をしたユーザーの割合をリピート率と呼びます。
リピート率は「一定期間内のリピート顧客数 ÷ 累計の新規顧客数 × 100」で求められます。
LTV(顧客生涯価値)に大きく影響する指標のため、顧客のリピート化・ファン化を狙った施策でリピート率を高めることが可能です。
2-8. 離脱率
離脱率とは、全てのセッションにおいて当該ページでユーザーがサイトを離れてしまった割合のことです。
離脱率は、「当該ページの離脱したセッション数 ÷ 当該ページを含むセッション数の合計」で求めることができます。
数値が低いページと高いページの傾向を分析・比較すれば、効果的な施策を打つことが可能です。
2-9. 直帰率
サイトの来訪者が1ページのみでサイトから離れてしまった割合は、直帰率という指標で表します。
直帰率が高い場合、ターゲティングの改善やLPO(ランディングページ最適化)などが解決策に挙げられます。
2-10. 在庫消化率
総合通販サイトの場合、「販売した商品・サービスの数量 ÷ 仕入れ数」で算出できる在庫消化率にも注目しましょう。
売り切り型商品の在庫消化率が低い場合は、値引きやECサイト上の配置を最適化することで、在庫リスクを低減することが重要です。また、市場調査や顧客ニーズ分析による商品開発や、仕入数の最適化もポイントです。
2-11. CPA(コンバージョン単価)
CPA(Cost Per Acquisition)とは、コンバージョン単価のことで、ECサイトでは商品・サービスの購入を1件獲得するためにかかったコストを指します。
顧客獲得単価や成果単価とも呼ばれ、「広告費 ÷ コンバージョン数」で求められます。
CPAが下がると利益が増加し、逆に上がると利益が圧迫される指標であり、広告の費用対効果を調べる際などに用いられます。
2-12. CPO(注文単価)
CPA(Cost Per Acquisition)は、新規顧客の受注を1件獲得する際にかかった注文単価を指します。
「広告費 ÷ 注文数」の計算式で求めることができ、顧客獲得費用とも呼ばれています。
CPAと併せて広告費の最適化を図る際に用いられる指標で、顧客ロイヤルティやLTV(顧客生涯価値)を向上させる施策などで、改善につなげることが可能です。
2-13. ROI
ROI(Return on Investment)は、投資に対してどのくらいの利益が出たかを確認できる指標です。
ROIは「利益金額 ÷ 投資金額 × 100%」で求めることができ、投資額以上の利益が出ている場合は100%を超える数値が出ます。
ROASとROIは、コンバージョンの価値が異なる複数の商品・サービスを販売するECサイト分析に適した指標です。
2-14. ROAS
ROAS(Return On Advertising Spend)は、広告費の費用対効果を表す指標です。
「広告経由で得た売上 ÷ 広告費 × 100%」の計算で、広告1円あたりの売上を確認できます。
ROASを分析する際、損益分岐点を超えるかどうかを一つの目安とし、損益分岐点を下回った場合はプロモーション施策や予算の再編成などで改善します。
3. ECサイト分析の進め方
自社ECサイトの分析を進める際、改善したいKPIを分析できるツールを導入するなどして、分析基盤を構築します。
データに基づいた仮説・立案、分析結果に基づいた施策の実行と効果測定を繰り返し、CVRや収益の改善につなげるというのが基本的な流れです。
3-1. KPIの設定
まずは、KPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。
たとえば、ECサイトの利益拡大を目的とした分析では、セッション数やCVRなどをKPIに設定し、顧客ロイヤルティを高めたいという場合には、リピート率やLTVなどを設定します。
多岐にわたる分析ポイントがあるため、最終的に損益分岐点を超えるようにさまざまな指標をKPIに設定するのがポイントです。
3-2. データを可視化できる仕組みづくり
KPIを設定した後は、自社ECサイトの個々の数値を集計・分析できる基盤を構築します。
自社開発で分析機能を実装できない場合は、インターネット上で無料提供されているアクセス解析ツールや、ベンダーが提供するデータ分析ツールなどの導入を検討しましょう。
アクセス解析ツールで代表的なGoogle Analyticsを導入した場合、UTMパラメーターを活用することでセッションを細かく分類し、データを比較することができます。
ツールによってECサイトとの連携方法は異なりますが、ベンダーによるサポートでスムーズに運用を始められます。
3-3. データ分析
ECサイトに実装した分析機能やベンダーから提供されたツールを利用し、さまざまな角度から顧客情報を分析しましょう。
データ分析の手法は主に以下の5種類に分けられ、目的に応じて相性の良い手法を選びます。
分析方法 | 特徴 |
行動トレンド分析 | 過去の購買行動をもとに、シーズンごとの購買率を求める手法。 |
セグメンテーション分析 | 類似性の高い顧客をグループ化し、各グループに有効な施策立案につなげる分析手法。 |
RFM分析 | 直近購入日・購入頻度・購入金額の3つの軸で顧客をグループ化し、各グループに有効な施策立案につなげる分析手法。 |
CTB分析 | カテゴリ・テイスト・ブランドという3つの軸で顧客をグループ化し、購買予測を行う手法。 |
デシル分析 | 顧客を売上貢献度の高い順にグループ化し、各グループの共通点を洗い出す分析手法。 |
上記のデータ分析と併せて、時系列での分析や自社ECサイトと競合サイトとの比較も行います。
前月・前年などの同じ期間の数値との比較や、過去から現在に至るまでの数値の推移を分析することで、フェーズに合った施策を打ちやすくなります。
また、競合他社との比較は、自社ECサイトの強み・弱みを洗い出すことできるため、競合優位性を確立するのに必要です。
3-4. データに基づいた仮説・立案
分析で抽出した数値から、顧客行動の仮説を立て、課題を改善できる施策立案を行いましょう。
たとえば、自社ECサイトのCVRが伸び悩んでいる場合、何が原因で数値が伸びないのかを議論します。
抽出した数値から「商品ページを来訪したのに購入されなかった」「カートに入れたのに離脱してしまった」などの顧客行動を読み取り、改善に繋がる施策立案を行います。
3-5. 分析結果に基づいた施策実行
仮説・立案で導き出した施策を実行しましょう。
目標を達成できたかどうか、どれだけ目標に近づけたかを確認できるように、施策の実行/運用期間中の売上データや顧客情報をCRMツールなどで蓄積する必要があります。
3-6. 実施施策の効果測定
施策結果が出た後は、蓄積したデータをもとにCVR・LTV・顧客獲得単価・顧客満足度などの指標を分析し、効果測定を行いましょう。
たとえば、CVRが目標に達しなかった場合、広告での訴求の仕方やLPのキャッチコピーなどを改善し、目標達成まで再び仮説・立案→施策実行→効果測定を繰り返します。
顧客満足度に影響するLTVが低い場合には、顧客との良好な関係を築けるチャットコマースの導入や、CRM戦略の実施などで改善しましょう。
施策は1度打って終わりではなく、KPIを向上させられるように改善・アップデートしていくことが重要です。
4. ECサイト分析の重要ポイント
ECサイトの分析を行う際、重要なテーマとなるのが収益の最大化とコスト最適化です。
また、データ分析から施策の実行、改善に至るまでのプロセスを改善するOODAループも、ECサイトの収益とコストの課題を解決する有効な手段です。
4-1. 収益の最大化
ECサイトの収益を最大化するために重要とされる指標は、セッション数・CVR・AOV・リピート率の4つです。
セッション数の分析では、どの流入元からの数値が伸び悩んでいるかを確認し、SNSマーケティングやコンテンツマーケティング、Web広告などの施策で改善します。
ECサイトのCVRは、商材やECモデルによって異なるものの、1%〜2%程度が平均的な水準とされています。CVRが平均よりも低い場合には、商品の購入ページまでの導線やUI/UXを改善し、モバイルフレンドリーなECサイトをつくるなどの対策が必要です。
すでに自社ECサイトのCVRが平均的な水準を超えている場合、アッパーが見えているため、セッション増やす施策などに注力しましょう。
AOVを上げるには、平均注文単価の向上につながるクロスセル・アップセルが効果的です。
クロスセルは、ある商品をカートやお気に入りに追加した顧客に対して、その商品と関連する他の商品を紹介する販売手法です。アップセルでは、既存顧客に対してより高額な商品・サービスを紹介して平均注文単価の向上につなげます。
リピート率は、自社商品・サービスに対する満足度を表す指標でもあります。LTVは、顧客情報管理ツール(CRM)で分析することができ、キャンペーン施策やチャットコマースの導入などで改善につなげられます。
セッション数・CVR・AOV・リピート率という4つの指標を連動させた施策の実行が、ECサイトの収益を伸ばす有効な解決策です。
4-2. 自社ECサイトのリソースの最適化
複数のECサイトを運営している場合、各ECサイトでリソースの最適化を図りましょう。
たとえば、販売手数料がかかるECモールに複数の店舗を開業している場合、自社ECサイトに集客して販売を行った方が利益が高いケースもあります。
データ分析にもとづいて広告費の最適化を図ることも重要です。集客施策で運用しているSNS広告とWeb広告の費用対効果を、ROASとROIで分析して適切かどうかを判断しましょう。
費用対効果の悪い広告を削り、良い広告に予算をかけるなどの対策を行い、コスト配分を改善することで最適化を図れます。
4-3. OODAループによる施策の改善
新型コロナウイルスの流行により、顧客ニーズの多様化が急速に進んだことで、臨機応変な施策が必要とされています。
OODAループとは、流動性の高い状況でも、顧客ニーズを捉えた柔軟性のある施策を生み出せるフレームワークのことです。
OODAループでは、以下の4つのフェーズで施策の改善を行います。
・Observe(観察)
・Orient(方向づけ)
・Decide(決断)
・Act(実行)
■Observe(観察)
「観察」のフェーズでは、ターゲットとなる顧客情報をできるだけ多く収集します。
顧客の行動や置かれている状況/環境に加えて、市場や競合サイトについても幅広く情報を収集しましょう。
■Orient(方向づけ)
「方向づけ」のフェーズでは、収集した顧客情報をもとにさまざまな指標の分析とKPIの設定を行います。
根拠にもとづいた仮説を立てて、施策の方向づけを行う重要なフェーズです。
■Decide(決断)
目標達成に向けた最適な施策を議論・立案するフェーズが「決断」です。
Orient(方向づけ)で絞られた複数の選択肢の中から潜在的な結果を考慮した上で、最善な施策を選択をしましょう。
■Act(実行)
最後の「実行」のフェーズでは、明確な方針と目標を設定した施策を実行します。
「実行」の結果を判定した後、「観察」のフェーズへ戻り、各フェーズでの行動を改善しながらループさせます。
OODAループは、各フェーズにおける意思決定を高速化するほど、革新的な施策とより良い結果が生まれやすくなります。
5. ECサイト分析に欠かせないツール
ECサイトでさまざまな指標を分析するには、アクセス解析や顧客情報管理ができる複数のツールが必要とされます。
自社EC・ECモール・SNSなどのプラットフォームによって、収集できるデータが異なります。自社に必要なデータ・機能は何かを洗い出し、ツールを最大限活用しましょう。
5-1. 一元管理ツール
Amazon・楽天市場・自社ECサイトなど、ECチャネルを複数運営している場合、一元管理ツールがあればさまざまなデータを集約し、分析・管理することができます。
<一元管理できるデータ>
・売上・収益
・受注情報
・在庫情報
・商品情報
・顧客情報など
また、一部のベンダーが提供するツールでは、複数のプラットフォームやチャネルのクロス分析が可能なため、顧客情報の管理・分析作業の効率化を図れます。
【関連記事】
ECサイト一元管理システムとは?3社を比較&失敗しない選び方のポイント
5-2. アクセス解析ツール
ECサイトとアクセス解析ツールを紐づけることで、訪問者数や流入元などのデータを収集できます。
たとえば、Google Analyticsでは、リアルタイム分析で現在サイトに訪れているユーザー数や属性などを確認可能です。
Google Analyticsは最も有名なアクセス解析ツールですが、細かい顧客行動までは解析できません。そのため、他の分析ツールと組み合わせることで多角的な分析ができるようになります。
5-3. 顧客情報管理ツール(CRM)
ECサイトにおける膨大な量の顧客情報は、CRMツールを導入することで効率よく管理・分析できます。
CRMツールがあれば、ECサイトに蓄積された顧客情報をもとに、顧客属性・購入履歴・キャンセル率・リピート率などの分析が容易になります。
CRMツールによって搭載されている機能が異なるため、自社ECサイトの目標達成に向けて重要な指標を分析できるツールを選ぶ必要があります。
5-4. A/Bテストツール
A/Bテストとは、デザイン・テキスト・UI/UXなどが異なる2つのページ・要素を用意し、CVRやクリック率を比較・検証するテストのことです。
たとえば、無償提供されているGoogle Optimizeでは、ページ全体の成果を比較できる「Redirectテスト」や、複数の画像・コピーの組み合わせの中で最も効果的なものを判断できる「多変量テスト」を利用可能です。
データに基づいた仮説・立案→施策実行→効果測定を繰り返す際にA/Bテストが利用され、中長期的なCVRやリピート率の向上、直帰率の低下などを目指すことができます。
5-5. チャットコマースツール
チャットコマースとは、LINEをはじめとするチャットサービスを通じて、顧客へ接客やセールスを行う手法のことです。
ECサイトにチャットコマースツールを導入した場合、顧客と1対1のコミュニケーションを図ることができ、EC特化の会話型CRMと連携すれば会話データのログを蓄積できます。
蓄積したデータの分析により、顧客が興味を持っている商品や必要とするサービスを把握できるため、顧客満足度の向上につながる施策を打ちやすくなります。
チャットコマースツールは、事前に用意したシナリオに沿って自動的に回答が行われる「シナリオ型」と、事前に入力したデータや顧客情報に応じてAIが適切な回答を行う「AI型」があるため、自社ECサイトと相性の良いツールを選びましょう。
【関連記事】
チャットコマース(会話型コマース)とは? 導入するメリットや活用事例を紹介
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ECサイト分析は、収益の最大化やコストの最適化を目的とし、セッション数やCVRなどのさまざまな指標を用いて行われます。
データ分析を効率化したい場合は、異なるプラットフォーム・チャネルのデータを一元管理できるツールや、膨大な量の顧客情報を管理・分析できるCRMツールなどを導入しましょう。
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