3PL(サードパーティ・ロジスティクス:3rd Party Logistics)とは、企業が外部の第三者企業に物流業務の一部および包括的な管理を委託することもしくはサービスを提供している事業者を指します。
D2Cブランド・ECサイト運営において、フルフィルメントの一部である物流業務の最適化は重要なポイントですが、自社で物流ルートを構築したり適切な業者を選定したりするには、かなりのコストと労力が必要です。本来企業が注力すべき製品の品質改善や販促活動に十分なリソースを割けない事態にもなりかねません。
このような背景から、多くのD2C/EC事業者が3PLの利用を検討し、実際に導入しています。一方で、サービスの種類やメリットなど具体的な内容まではよく分からないという場合も多いでしょう。
本記事では、3PLを検討している方向けに、サービスの種類や利用メリット、選定のポイントまでご紹介します。
この記事でわかること
・3PLの仕組みやサービスの種類
・3PLの利用メリットとデメリット
・3PLの選定ポイント6つ
こんな方におすすめ
・D2Cブランド・ECサイトを運営している
・3PLの利用を検討している
・EC物流業務の効率化をしたい
1. 3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とは?
3PLは、サードパーティロジスティクス(3rd Party Logistics)という言葉の通り、「外部の事業者に物流業務を委託すること」または「外部の物流事業者」を指します。
委託する業務の範囲に関しては、広義で解釈する場合と狭義で解釈する場合とで違いがあります。
“広義では、荷主企業のロジスティクスの全体もしくは一部を、3PL事業者に委託する物流形態の一つと定義される。 狭義では、荷主企業のロジスティクスを物流改革の提案から運営までを包括的に委託し、3PL事業者自身が荷主企業の立場・視点から物流効率化(物流費削減、供給の迅速化、売上の拡大など)を実現する物流形態と定義される。 ”
ウィキペディアでは難しい言葉で定義されていますが、要は、
・狭く言うと「企業のロジスティクスを、物流戦略から実行までをトータルサポートすること」
・広く言うと「企業のロジスティクスを、一部でもサポートすること」
ということです。
市場規模に関しても、EC市場の拡大に伴い拡大してきており、2021年から2025年の間に、日本国内でも年平均成長率3.73%で拡大し続け、91億7,000万米ドルもの市場に成長すると見込まれています。
2. 3PLの重要性
さまざまな商品で溢れかえっている現在では、企業は顧客に選ばれ続けるために他社との差別化が必要なため、物流業務においても単に商品を届けるだけでなく、品質を担保したうえで迅速に商品を届けることが求められています。
一方で、本来なら企業が投資すべきなのは商品・サービスの品質向上や販促活動です。フルフィルメントの一部である物流業務は倉庫管理や在庫管理、配送管理と多岐にわたるため、これらの品質を向上させるためにはかなりの労力と時間がかかってしまいます。
自社で物流業務を完結できるような設備を整えるには莫大なコストがかかりますし、それぞれの物流業務を専門業者に委託するには業者選定だけでも時間が割かれるでしょう。
第三者企業に物流業務全体の管理を委託できる3PLは、物流業務にリソースを割けない企業にとって欠かせないサービスです。以下では、システムと現場のそれぞれの観点から3PLの重要性について詳しく解説していきます。
【3PL重要性①】システム観点
物流業務には商品の仕入れから配送まで複雑な工程があります。これらを全体最適で管理できるシステムを選ぶだけでも大きな負担がかかります。3PL事業者は、事業者自身が保有するシステムや提携パートナーのシステムから最適な組み合わせを提案するため、システム選定に悩む必要はありません。
また、導入後も実情に合わせたシステムの改善なども行ってくれる場合もあり、安心してシステム管理を任せることができます。
【3PL重要性②】現場観点
物流業務においてコストが割かれるのはシステムだけではありません。システムを扱う人材の育成や各システムのマネジメントにも相応のコストが必要になってきます。これらをまとめて外部に委託することで、より注力すべきコア業務にリソースを割くことができます。
3. 3PLの種類
3PLの種類には、「運用代行サービスの有無」「自社アセットの有無」「業務内容の違い」があります。自社に最適な3PLサービスを選ぶポイントになるので、サービス導入検討中の方はおさらいしておきましょう。
【3PL種類①】運用代行サービスの有無
事業者によっては、システム提供のみ行う場合、物流代行のみ行う場合、その両方を行う場合に分かれます。物流代行を請け負う事業者であれば、具体的には以下のような業務の運用代行を委託することが可能です。
■入庫・保管
メーカーからの商品の仕入れ、数量の管理と保管を行います。
■仕分け
配送先や荷主企業からの要望に応じた仕分けを実施します。
■ピッキング
システムを利用し、ミスを抑えながら商品のピッキングを行います。
■流通加工
必要に応じて、タグの取り付けや同梱物の用意をします。
■梱包
包装、ラベル貼りなどを行い、物流の効率化と取引の利便性向上につなげます。
■出荷
提携している物流ネットワークを利用し、効率よく配送します。
3PLと似た概念にフルフィルメントがありますが、フルフィルメントサービスについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
フルフィルメントサービスとは?EC担当者は押さえたい業務内容・メリット・比較選定ポイント5つから成功事例まで
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【3PL種類②】自社アセットの有無
アセットとは英語で「資産」という意味で、3PL事業者が倉庫や車両、管理システムなどを保有している業態は「アセット型」と呼ばれます。反対に、倉庫などの資産を持たず、他社の資産を利用してサービスを提供する業態は「ノンアセット型」と呼ばれています。
具体的な資産としては、以下の3つがあります。
■ハードウェア(倉庫を除く)
バーコードの読み取り機器、輸送のためのインフラ・車両など
■ソフトウェア(システム)
物流管理システム、情報管理システムなど
■倉庫(物流センター)
商品の保管から発送まで行う拠点
【3PL種類③】業務範囲の違い
3PLと似た業務形態として「4PL」「フルフィルメントサービス」があります。混同しやすいため、それぞれの違いを確認しておきましょう。
■3PLと4PLの違い
3PLは、主に現場のオペレーションを請け負うもので、物流コストが3PL事業者の売上になるため、コスト削減に積極的になりにくい傾向がありました。
一方、4PLは3PLの業務内容に物流戦略のコンサルティングが加わった業態です。荷主企業の経営戦略に基づいた物流戦略を立案するため、より顧客の利益向上を重視した提案を行う傾向があります。
■3PLとフルフィルメントサービスの違い
3PLの業務範囲は物流関連業務に限定されますが、フルフィルメントサービスでは商品の受注から配送までの一連の業務が含まれます。在庫管理や発送業務、問い合わせ対応などECに関わる全ての業務が対象です。
3PLサービスとフルフィルメントサービスの違い・物流サービスの種類について詳しくはこちらの記事でも詳しく解説しています。
3PLとフルフィルメント、EC物流代行で押さえるべき物流サービスの種類とは?
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4. 3PL導入のメリット
3PLを導入することで、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、3PL導入のメリットをそれぞれ解説していきます。
・物流品質の向上
・フルフィルメント業務の効率化
・労務リスクの排除
・物流コストの適正化
・注力業務へのリソース集中
【3PLメリット①】物流品質の向上
物流の専門家に委託することで、自社が独自で行うよりも迅速かつ高品質な状態で商品を届けることができます。
【3PLメリット②】フルフィルメント業務の効率化
入荷管理からピッキングや決済、顧客対応までフルフィルメント業務は多岐にわたります。これらを自社で行ったり都度業者に依頼したりすると、どうしても非効率な運用になってしまいます。3PLにフルフィルメント業務までまとめて委託することで、効率的な運用が期待できます。
【3PLメリット③】労務リスクの排除
フルフィルメント業務の効率化が進むことで、自社雇用の従業員の長時間労働の解決にもつながります。
【3PLメリット④】物流コストの適正化
自社で業者選定を行う場合、提示されたコストが適正かどうか判断が難しいものです。物流の専門家に最適な業者選定を委託することで、物流コストの適正化が図れるでしょう。
また、トレンド変化や新商品発売に伴う波動物流にも柔軟に対応でき、且つ従量課金制が多いため、固定費として自社リソースを余分に取る必要もなくなります。
【3PLメリット⑤】注力業務へのリソース集中
物流業務の委託により、本来自社が注力すべき製品の品質向上や販促活動など、より重要度の高い業務にリソースを集中させることができます。
5. 3PL導入のデメリット2つ
一方で、3PL導入のデメリットも少なからずあります。導入前にデメリットも確認しておきましょう。
・社内へのノウハウ蓄積の欠如
・緊急対応などの柔軟性が薄れる
【3PLデメリット①】社内へのノウハウ蓄積の欠如
一連の物流業務を外部に委託するため、社内に物流業務のノウハウを蓄積できなくなります。
とはいえ、物流業務をインハウス化するのは月刊出荷件数が数十万以上が妥当であるため、月間の出荷件数が数万〜数十万までビジネスが拡大するまでは外部委託する方が望ましいでしょう。
【3PLデメリット②】緊急対応などの柔軟性が薄れる
トラブル発生時の緊急対応などは社内であれば調整がつきやすいですが、外部に委託すると契約内容と異なる対応は難しいもの。特にノンアセット型の場合には現場へ業務連絡が届くのに時間がかかるため、迅速な対応が難しい場合があります。
ただし3PL事業者にノウハウが蓄積されている場合は、自社ブランドの特性に合わせて、起こり得る緊急対応項目を事前にすり合わせておき、迅速に対応ができるようにすることもできます。
6. 3PLの選定ポイント6つ
ここからは3PL導入のメリット・デメリットをおさえた上で、どのような3PLを選ぶべきかを解説します。もちろん料金の安さも選定基準の1つですが、安さだけで選んでしまうと物流品質の低下を招きかねません。
以下では3PLの選定時に押さえるべきポイントについて詳しく解説していきます。
・3PLの種類・拡張性
・特化している事業形態や商材カテゴリ
・柔軟性
・サポート体制
・実績
・料金
【3PL選定ポイント①】3PLの種類・拡張性
3PLを導入したあと、自社ブランドが成長するにつれて、委託業務の範囲やシステムの変更が必要になる場合がほとんどです。自社の事業規模が変わっても適切な対応をとれる業者かどうかは重要な選定ポイントです。
また、3PLの種類によっては対応できない業務もあるので、3PLの種類もあわせて確認しておきましょう。確認すべき点は具体的には以下の3つです。
■ハードウェア/ソフトウェアが必要なのか
ノンアセット型の3PLであれば、ハードウェア・ソフトウェアを自社で用意しなければならない場合があります。自社の業務フローに物流システムが既に組み込まれているなら、煩雑な業務代行のみを安価で委託することができるので向いているでしょう。
■物流アウトソーシング(運用代行)が必要なのか
3PL事業者の中にはシステム提供のみで運用代行は請け負わない場合もあります。各業者との連携が必要となるので、人手が十分足りている企業にはおすすめです。
■どこまでの業務範囲を委託したいのか
選定前にどこまでの業務範囲を3PL事業者に委託したいのか、自社ですりあわせをする必要があります。事前に入荷から出荷、配送までの物流業務を洗い出して、委託範囲を整理しておきましょう。
具体的に業務内容が想定できない場合や専門家に相談したい場合は、3PL事業者に問い合わせて相談にのってもらうことも可能です。
【3PL選定ポイント②】特化している事業形態や商材カテゴリ
自社ブランドの事業形態や商材によって、必要な物流業務も大きく変わります。総合的な3PL事業者の場合、荷主企業の業界に対する知見がないため求めるサービスが提供されない事態も起こりえます。
事業者によっては特化している事業形態や商材カテゴリがあるので、事前に確認しておきましょう。
■事業形態
3PL事業者が特化している事業形態としては以下のようなものがあります。具体的には、倉庫内でのオペレーションフローが異なっていたり、医薬品や高級品などの商材は倉庫として保管できるようにするため申請が必要なため、取り扱い可能な商材によって特化している事業形態もあります。
・D2C/EC
・製造業
・医療
・小売
■商材カテゴリ
次に、D2C/EC特化型3PL事業者が得意としている商材カテゴリとしては以下のようなものがあります。
・アパレル :ささげ作業に対応、多SKUの保管に対応
・食品 :冷凍冷蔵保管に対応
・定期購入型:毎月一定の作業工数の発生が見込めるため、倉庫内のリソースを分割している
特に食品では、青果や冷凍食品など食品ジャンルごとに特化している点も特徴です。
【3PL選定ポイント③】柔軟性
繁閑期や売れ筋商品の変動など、物流業務はさまざまな状況に柔軟に対応(=波動対応)することが求められます。特に繁閑期は企業によって異なるので、自社の繁閑に合わせて対応できる現場力があるかは確認必須です。
一般的には、アセット型の3PL事業者の方が柔軟性が高いとされていますが、ノンアセット型事業者の中にも、専門の物流エキスパートを倉庫に在中させて波動対応を行えるようにしている事業者もあります。
【3PL選定ポイント④】サポート体制
物流業務には思わぬトラブルがつきものです。困ったときに即対応してくれる体制が整っていると安心です。具体的には以下の点を確認しておきましょう。
・問い合わせ後、どのくらいで返信がくるか
・電話やチャットサポートがあるか
・緊急時に対応してくれるか
特に緊急時の対応については、専門スタッフに対応してもらえるのかなど過去の事例を含めて入念に確認しておきましょう。
【3PL選定ポイント⑤】実績
過去の実績がどの程度あるのかも重要な選定ポイントです。自社ブランドと同じ商材を扱った経験や同規模の企業案件を請け負ったことがあるかなどヒアリングしておきましょう。
【3PL選定ポイント⑥】料金
自社の予算内に収まる料金であることが必須条件ですが、提示された料金が適正かどうかも選定ポイントの1つです。見積もりの内訳を確かめるようにしましょう。
7. 自社に最適な3PLを選定しよう
D2Cブランド・EC事業運営において、フルフィルメントの一部である3PLは物流業務の重要な選択肢の1つです。特に自社で倉庫やシステムを持たない場合には欠かせないサービスでしょう。
一方で、多数ある選択肢の中から自社に合う事業者を選ぶことは難しく、自社の成長フェーズや課題によって、3PLの導入判断や選定基準も変わるため、それらを踏まえて自社のみで最適な判断を下すのは現実的に困難でしょう。
まずは専門家に気軽に相談してみてはいかがでしょうか。AnyMindでは3PLのご相談も承っているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
以下の記事でも、物流アウトソーシング前に押さえておきたいポイントについて詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
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