ECサイトでは難しいとされていた1対1の接客を実現した会話型コマースは、オンライン販売の新しい販売形式として今、高い注目を集めています。
メッセージアプリなどのチャットを使い会話形式で買い物ができる機能ですが、具体的な導入メリットや活用シーンがわからず、導入するかを悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
本記事では、会話型コマースの仕組みや導入するメリットなどをわかりやすく紹介します。
この記事でわかること
・会話型コマースの特徴・仕組み
・会話型コマースを導入するメリット・導入事例
・会話型コマースを活用できるSNS
こんな方におすすめ
・会話型コマースの導入を考えているので仕組みを知りたい
・ECサイトの弱点である1対1の接客を強化したい
・新たに展開するECサイトのサービスを充実させたい
1. 会話型コマース(会話型コマース)とは
はじめに、会話型コマースの基本的な特徴と市場規模を解説していきます。
1-1. 特徴
会話型コマースとは、LINEやInstagramダイレクトメッセージなどのチャットアプリ・サービスを利用し、チャット/会話を通して商品紹介やお問い合わせ対応を行うこと、またはその仕組み・概念を指します。
ユーザーの顧客体験(CX)向上に繋がりやすく、ECだとより購買に繋げやすい、などのメリットがあります
今まではリアル店舗でしか味わえなかった接客体験ですが、会話型コマースを利用すればオンラインでも店員と対話ができます。
対話を通じてリアルタイムで顧客のニーズや問題点をヒアリングすることができるため、理解度を深めて的確な接客を提供することが可能となります。
1-2. 市場規模
アパレル、コスメ、飲食店など、幅広い業種で導入が進んでいる会話型コマースは、2011年にsiriが誕生してから現在に至るまで、急速な勢いで市場規模を拡大しています。
矢野経済研究所が発表した「対話型AIシステム市場に関する調査」によれば、2017年は11億円だった国内の会話型コマースの市場規模は、2022年には132億円に到達する見通しです。
ブランド数が増加・多様化した現代では、消費者から選ばれ続けるブランドであり続けるための手段として、お客様体験の向上が重要で、会話型コマースがそのための手段として注目を集めています。
2. 会話型コマースが注目されている理由
国内外を問わず導入事例が増え続けている会話型コマースですが、なぜここまで高い注目を集めているのでしょうか。その理由を3つ紹介していきます。
2-1. チャットによるコミュニケーション機会の増加
現代社会において、チャットの存在は我々の生活の一部として根付いています。
チャットアプリの代表であるLINEは、2022年時点での利用者数が国内で9200万人を超えています。
チャットアプリによるコミュニケーションが日常になった点は、会話型コマースが注目されるようになった大きな理由の一つです。
2-2. ECサイトでお客様と1対1のコミュニケーションを取れる
従来までのECサイトでは、お客様と気軽にコミュニケーションすることができませんでした。
そのため、実店舗に比べて購買体験の充実度が及ばないとされていたECサイトですが、会話型コマースが導入されたことで、消費者は対面や電話に比べてハードルが低いチャットでコミュニケーションが取れるようになりました。
気軽に問い合わせができるようになったことで、より効率的に商品をアピールでき、新たな購買経路を生み出せます。
たとえば、ECサイトで販売されている商品で気になる情報があった場合、これまでは実店舗で直接聞くか、問い合わせをするという方法しかありませんでした。
しかし、会話型コマースが導入されていれば、即座にチャットで気になる点を書き込み、回答を得ることができます。顧客とリアルタイムで1対1のコミュニケーションを取れることで、購買意欲を大きく促進することに繋がります。
2-3. 顧客の顕在ニーズに的確に応えられる
会話型コマースが導入されていれば、顧客の顕在ニーズに応えられます。
さまざまな集客施策によりECサイトへ多くのユーザーを流入できたとしても、一人ひとりがどのようなニーズを抱えているかまでは把握できません。
チャット機能で気軽に質問できる環境が整備されていれば、お客様の疑問点を把握した上で最適な情報やサービスを提供することができます。
お客様に対する理解を深めることで、ECサイトでより効率的な販売活動を行えるようになります。
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3. 会話型コマースの軸となるチャットボットの仕組み
会話型コマースサービス・プラットフォームには、大きく分けて2種類のタイプがあります。
・Web設置型でECサイト上でそのままチャット(会話)できるタイプ
・LINEやInstagramのダイレクトメッセージ機能にてチャットするタイプ
どちらにも共通しているのが機能の軸となるチャットボットシステムで、
・シナリオ型(ルールベース型)
・AI型(FAQ型)
の2タイプがあります。
3-1. シナリオ型(ルールベース型)
シナリオ型(ルールベース型)とは、事前に作成しておいたシナリオに沿って自動で回答をしてくれるチャットボットです。
フローチャート形式で事前に想定される質問と回答を設計し、シナリオは分岐して進んでいく仕組みです。質問と回答は対になっています。
・ユーザーは質問に対する選択肢を選ぶだけなので手間がかからない
・定型的な質問には自動的に回答できるため従業員の業務工数を削減できる
・システムにかかるコストが安い
事前にユーザーからの質問を想定して回答を作成しておく必要はありますが、システムにかかるコストが安いという点はメリットです。
一方で、シナリオで設計されていない質問には回答することができません。顧客が質問を入力するわけではないので、顕在的なニーズを把握しにくいというデメリットがあります。
3-2. AI型(FAQ型)
AI型(FAQ型)とは、事前に入力しておいたデータや顧客情報をAIが解析し、統計的に最も適切な回答を自動で表示するチャットボットです。
具体的には、ECサイトであればCRMと連携することで過去の購入履歴を元に自動的におすすめの商品を提案したり、飲食店であれば希望日時を聞いて空席情報の結果を伝えることができます。
・お客様の購買意欲を促進できる提案を自動で行える
・お客様が入力した内容は学習データとして蓄積されていく
・シナリオ型よりも複雑な質問に対応することができる
シナリオ型のように定型文を使い会話をするわけではないため、より複雑なお客様からの質問にも回答することができますが、回答の精度を上げるためにはロジックを作成しておく必要があります。
運用を開始する前にデータを入力しておき、正しい回答内容を提供できるかどうかのチューニングは不可欠です。
4. 会話型コマースに活用できる主なサービス
ここからは、実際に会話型コマースを導入する際に活用できる主なSNS・チャットサービスを紹介していきます。
4-1. LINE
国内最大のメッセージアプリ「LINE」では、トーク画面上で商品の購入や問い合わせができる会話型コマース機能を活用できます。
ブランドの公式アカウントを作成することで、以下の機能を利用することができます。
・応答メッセージ
・AI応答メッセージ
・Messaging API
応答メッセージは、ユーザーから送信されてきたメッセージに反応して事前に設定した回答を自動返信する機能です。シナリオ型チャットボットのように分岐して進めることはできませんが、予測できる簡単な質問であれば適切な回答を設定することができます。
AI応答メッセージは、「挨拶」「お礼」「使い方」などのタイプをAIが判断し、合致する情報を自動的に返信する機能です。
Messaging APIは、自社でカスタマイズして利用されることは多くなく、どちらかというと会話型コマースプラットフォームを使用する時に利用されます。
また、基本的には事前に登録しておいた回答を返信する機能のみなので、複雑な質問や問い合わせには対応できません。とはいえ、国内で最大の利用者数を誇るメッセージアプリなので、会話型コマースにおいては一番最初に導入を進めたいチャットサービスです。
4-2. Instagramのダイレクトメッセージ
2021年6月2日に実装された新機能により、Instagramのダイレクトメッセージ(DM)を会話型コマースとして活用することが可能になりました。
チャットボットから「よくある質問形式」で会話内容を提案できるため、顧客のニーズをDMの自動返信で解消することができるようになります。
また、ブランド側からお客様に連絡を取りたい場合、「お客様から問い合わせを始める」というトリガーが必要でしたが、最新のアップデート情報では、LINE同様にブランド側から自由にキャンペーン配信などができるようになることが分かっています。
Instagramはブランドの世界観を表現するのとも相性がいいため、今後ますます会話型コマースとしての利用が拡大すると思われます。
4-3. Facebook Messenger
Facebook Messengerは、Facebookのアカウントを持っている人同士が無料でメッセージをやり取りできるメッセージアプリです。
LINEやSkypeと同様にインターネット回線を使い無料通話をすることが可能で、テキストだけではなく写真や動画を共有することもできます。
Facebook Messengerのチャットボットでは、連携している外部サービスを使うことで無料で顧客からのメッセージに対して自動返信ができるようになります。
ツールを連携し、キーワードやシナリオの設定を行うだけで利用できるという快適さが大きなメリットで、独自のカスタマイズも手間がかかりません。
4-4. WhatsApp
Facebook社が運営しているアメリカ発のWhatsAppは、世界に目を向ければLINEよりも利用者数が多いメッセージアプリです。
WhatsAppのチャットボットは、会話型のマーケティング、販売、プロモーションに使用することができ、柔軟な自動返信に対応しています。
4-5. Webサイト設置型
会話型コマースはSNSやチャットサービスを通して利用するだけではなく、Webサイト上で活用することもできます。
実際に、チャットボックスが設定されているWebサイトを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
Webサイトにチャットボックスが設置されていると、ユーザーは疑問や困ったことをすぐに質問して解決することができ、顧客体験の向上に繋げられるというメリットがあります。結果的に、お問い合わせ数や継続率の向上に繋がります。
ただし、チャットボットで回答しきれない質問へはスタッフが回答する必要があり、チャットアプリ連携型よりも回答スピードがお客様満足度に直結するため、常にカスタマーサポート担当を置いておく必要があるのはデメリットの1つです。
また、ログインなしのWebサイトだとCRMとの連携が難しくその場限りであるため、お客様と継続的にコミュニケーションを取ることが不可能であることも大きなデメリットとなります。LINEなどチャットアプリ連携型の会話型コマースのみ、一度お問い合わせしてくれたお客様に対して継続的にコミュニケーションを取ることができます。
5. 会話型コマースを導入するメリット
ここからは、実際に会話型コマースを導入することで得られるメリットを詳しく解説します。
5-1. CRM連携で長期的なコミュニケーションが可能
会話型コマースを導入により、顧客との長期的なコミュニケーションが可能になります。
会話型コマースではCRMとの連携でチャットの履歴も一緒に管理できるため、一度きりではなく継続的な接点を維持できます。
CRMでお客様の購買履歴やチャット履歴を管理することで、そのデータを元にチャットでキャンペーン配信ができます。
お客様一人ひとりに合わせて最適なコンテンツを配信することでお客様体験(CX)を向上させ、結果的にLTV(顧客生涯価値)の向上へと繋げることができます。
5-2. サードパーティCookie廃止の影響を受けない
会話型コマースを導入してお客様と直接繋がることで、サードパーティCookie廃止の影響を受けずにお客様にアプローチすることができます。
広告配信ではリターゲティング配信がお客様へのアプローチ手法の1つとなっていますが、サードパーティCookie廃止に伴い、このアプローチ手法が利用できなくなります。
しかし、Web設置型ではなくCRM連携型の会話型コマースプラットフォームを使用すれば、LINE友達追加やInstagramフォローなどでお客様と直接繋がれるため、継続的にコミュニケーションを取ることができます。また、ECサイトで作成したアカウントと紐付けてもらうことで、お客様の行動履歴や購買履歴を元に、適切なアクションを取ることができます。
5-3. 人的コストを削減できる
会話型コマースを導入すれば、人的コストを削減する効果が期待できます。
ECサイトを運営する際には、顧客からの問い合わせに対してカスタマーサポート窓口を設置しますが、アクセスが多く利用者数が増えれば、その分だけ多くの人手が必要になります。
しかし、会話型コマースの機能の1つである自動返信を使えば、よくある質問に自動で対応できるため、窓口の負担を大きく軽減することが可能になります。
5-4. 顧客情報を効率よく収集できる
会話型コマースを導入すれば、顧客情報を効率的に収集できます。
1対1のコミュニケーションで顧客接点を創出する機会が増えると、自社の商品やサービスに関心があるお客様に対する理解を深めることができます。
顧客データを多く収集できれば、より個人に対して効果的なアプローチで販促活動ができるようになるため、エンゲージメントの高いファンへと育てることに繋がります。
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5-5. 顧客ロイヤリティが上がる
会話型コマースの導入は、顧客ロイヤリティを向上させられるというメリットがあります。
お客様は、自身が受けた接客体験の質でブランドの好感度を決めるケースが多いです。従来までのECサイトでは接客体験の差別化を図ることは困難でしたが、会話型コマースを導入して実店舗で買い物をしているかのようにサポートできれば、お客様との良好な関係を構築できます。
6. 会話型コマースの導入事例
最後に、実際に会話型コマースを導入して成功している企業の事例を紹介します。
6-1. ヤマト運輸
宅配サービス大手の「ヤマト運輸」は、LINEを用いた会話型コマースの導入で業務の効率化に成功している企業です。
ヤマト運輸の会話型コマースでは、以下の対応を自動で行うことができます。
・料金の確認
・届くまでの日数
・受取日時の確認
・受取場所の変更
・集荷の依頼
・再配達の依頼
配達ドライバーの業務効率が上がるだけではなく、ユーザーも手間なく快適にサービスを利用できるため、双方にとってメリットが大きい会話型コマースの導入事例です。
6-2. 株式会社バルクオム
メンズ向けのスキンケアブランド「バルクオム」は、徹底したユーザーニーズのヒアリングを実施したことで会話型コマースの導入に成功した企業です。
バルクオムでは、顧客と1対1で丁寧にコミュニケーションを重ね、それぞれ個別で悩みを把握したうえで適切なアドバイスと共におすすめの商品を提示して購買へと誘導します。
仮に購買に繋がらなくても、メッセージのなかで得た情報はデータとして蓄積されるため、後からプッシュ通知で後追いをすることができます。
バルクオムは会話型コマースを使い顧客ロイヤリティを高め、ファンの信頼度獲得に成功した代表例です。
6-3. Amazon
世界最大のインターネット通販サイト「Amazon」では、公式アプリからカスタマーサービスへ連絡できる会話型コマースを導入しています。
よくある質問を選択肢の中から選ぶことができるだけではなく、フリーワードで直接質問を入力することもできるため、悩みや相談をリアルタイムで解決してもらえます。
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