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PubMatic |日本展開10周年を迎えるPubMatic、強みと今後の展望は?vol.2

デジタル広告分野におけるリーディングカンパニーの一社であり、プログラマティック広告の進化において中心的な役割を果たしているパブマティック株式会社(以下「PubMatic」)。アドテク業界の欧米と日本のマーケットの差や今後のPubMaticの展望などについて、PubMaticのDirector Customer Success 菱田 遼氏に株式会社フォーエムの取締役 綿本 和真と久保 廉がうかがいました。


取材者プロフィール

菱田 遼

パブマティック株式会社/Director, Customer Success

2013年にサイバーコミュニケーションズ(現CARTA COMMUNICATIONS)に入社、アドネットワークのメディア開拓やアドエクスチェンジのプロダクト担当として従事。2015年にストラテジックアカウントマネージャーとしてPubMaticに入社し、2024年で9年目を迎える。入社当初よりサプライサイドの既存顧客担当として自社プロダクトの導入やマネタイズの支援を行い、現在はPubMatic Japanのカスタマーサクセスチームのディレクターとして、ウェブメディア、アプリ、OTT/CTVにおけるビジネスを牽引。


-前回の内容はvol.1へ
https://anymindgroup.com/ja/case-study/pubmatic/


今後のアドテク業界の展望は?


久保
今後のアドテク業界の見通しと、サードパーティークッキー廃止への対応策に関して、貴社がパブリッシャーに提供するソリューションについて教えてください。

菱田氏
当社では、アイデンティティ管理ソリューションである「Identity Hub」を提供しています。Identity Hubは、サードパーティークッキーの代替となるIDを有効化するための“ハブ”として機能し、簡単にIDソリューションを利用できる仕組みです。 このようなソリューションは既にラッパーソリューションに含まれていることが多いかもしれません。当社のユニークなポイントは、そのIDソリューションを活用するためのプラットフォームを当社のラッパーから切り離して、単独で使用できる点です。最近では、プログラマティック広告における収益最大化を行う技術の一つであるオープンソースのヘッダービディングフレームワーク「Prebid」を導入しているパブリッシャーからIdentity Hub単独で使用したいという問い合わせが増えています。


Identity Hubの効果と今後の可能性


久保
Identity Hubの効果をどのように感じていますか?

菱田氏
まだ具体的なデータや可視化が難しい部分があります。DSP(Demand-Side Platform)からの買い付けにIDが組み込まれているから買い付けが成立したのか、それとも他の要因が影響したのか、はっきりと分からない状況です。

IDが収益やマネタイズにどれだけの効果をもたらしているのか明確に可視化していくことが今後の課題です。。ただ、クッキーがないリクエストを対象に、IDが含まれるリクエストと含まれないリクエストの収益性を比較すると、明らかに含まれるほうが収益性が高いので、何かしらの効果はあると考えています。

一方で、バイヤー(広告主・広告代理店・DSP)との会話で、実際に代替IDを使ったターゲティングを試しているという話があります。これはクッキーだけでなく、IDを活用したターゲティングが実際に使われている事例があることを示唆しています。また、当社のプラットフォームに連携されているデータもクッキーだけではなく、IDをベースに連携されているものも増えています。具体的な実感はまだ薄いかもしれませんが、これが収益に寄与してくる可能性は非常に高いと考えています。


欧米と日本におけるマーケットの違いとは?


綿本
IDはメディアが先に動いていかないとデマンドサイドがついてこないという議論がありますが、実際は、欧米のマーケットとの違いもあると考えています。 仮に欧米のマーケットが今100の状態だとしたら、日本の状態は進捗率で表すとどのくらいでしょうか?

菱田氏
半分にも届いていないように感じます。欧米では、CTV(Connected TV)の領域でもIDソリューションがすでに使われていたりします。日本では、まだクローズな状態だったりするので、そういう意味でのギャップはあると感じています。。また、媒体社が持っているファーストパーティーデータの量が違うので、ID導入のベースとなる環境が全然違うように感じます。

綿本
欧米の場合だと、類推IDよりも確定IDが基本的にビジネスの中心にあります。類推IDはそれを補完する役割といったイメージでしょうか?

菱田氏
そうだと思います。プレミアムパブリッシャーであれば、自社内で広告に活用できるファーストパーティーデータが整備されているので、確定IDが主流だと思います。一方、日本ではそこの整備が追いついていないので、類推IDにチャンスがあると捉えています。


ディスプレイ広告とビデオ広告の比較と、今後のフォーマットの展望について


久保
最近では、ディスプレイ広告の価格が低下している話をよく耳にします。多くのパブリッシャーがビデオ広告やインストリーム・アウトストリームの活用を進めていますが、貴社の視点からディスプレイ広告とビデオ広告を比較した場合、どのような印象をお持ちですか?

菱田氏
まだグローバルと日本では状況が少し異なると思いますが、日本ではディスプレイ広告の収益が減少していると感じています。グローバルでも同様の傾向だと考えますが、実は当社の決算ではQ4のディスプレイ広告の収益は前年比で9%伸びました。市場全体が厳しい中で、バイヤーとのSPOディールが効果的に機能した結果だと考えています。一方で、日本でもビデオ広告に関しては非常に成長しています。

久保
デマンドサイドの視点から見ると、ビデオ広告の予算は増加傾向にあると思いますが、ディスプレイ広告が完全になくなるわけではないと考えています。貴社のデマンドサイドから見て、ディスプレイ広告とビデオ広告、それぞれの予算に関する戦略的な取り組みはありますか?

菱田氏
私もディスプレイ広告自体が完全になくなるとは考えていません。ヘッダービディングが普及し、プログラマティックマーケットに入札できるディスプレイ広告の在庫が増加し、多くの入札によって収益が自然と向上していく時期が長くありました。その結果、プログラマティックマーケットにおけるディスプレイ広告の在庫がやや過剰になったとも思います。在庫には質の高いものもあれば、ビューアビリティが低いものやほとんど見られていないものもあります。最悪の場合、全く見られていないものもあります。

ディスプレイ広告の膨大な在庫から、広告主のROI(Return on Investment)を高める質の良いインプレッションを選び出し、DSPに提供することが、SSPの重要な役割です。これを実現するには、機械学習やアルゴリズムを駆使して、価値の高いインプレッションを特定し、その購入を促す高度な技術が必要だと思っています。


良質なインプレッションの定義は?


綿本
MFA(Made for Advertising)といった問題もあると思いますが、貴社における良質なインプレッションとそうではないものは、どのような指標をもとに評価をしていますか?

菱田氏
まずはビューアビリティです。広告枠にはビューアビリティが高いものとビューアビリティが低いものがあります。極端にビューアビリティが低いものは、最低限のクオリティが担保できないとしてDSPに送るビットリクエストから除外し、オークション前の段階で取り除きます。さらにフラウド率の高さも指標にしていて、フラウド率の高いドメインは排除するといった対策も行っています。

また、MFAの問題につながる可能性があるため、コンテンツやトラフィックのクオリティもしっかり評価し、品質スコアが極端に低いところは広告枠単位ではなく、サイト単位でマネタイズの対象から除外します。

久保
米国と日本を比較すると、アドフラウドやMFAサイトの量、悪質性などに差はあるのでしょうか?

菱田氏
グローバル全体のクオリティを管理しているインベントリクオリティチームでは、MFAの問題で日本が特に指摘されたことはありません。ボットトラフィックは過去に問題になりましたが、当社のデータでは、IVT関連の品質問題が世界平均よりもはるかに低いことが示されています。 日本においては、ディスプレイの単価が下落したことによって、広告の質やユーザー体験を阻害する広告枠が増えてきてしまっているような印象は肌感覚としてあります。ただフラウドの悪質性や影響は海外のほうが大きいように思います。


PubMaticの今後の展望と注力領域は?


菱田氏
先ほども述べた通り、当社はSSPだけでなく、さまざまな領域へとサービスを広げています。バイヤーに対して提供を開始した「Activate」やSPO契約を通じてバイヤーとの取り組みも強化しています。また、モバイルアプリ向けのソリューションや、コマースメディア向けにはオンサイト、オフサイトの両方で活用できる「Convert」というプロダクトなども提供しています。OTT(オーバー・ザ・トップ)/CTV(コネクテッドTV)のビジネスを伸ばしていくことも今年、力を注いでいきたい領域です。

久保
パブリッシャーのみなさんに向けてのメッセージをお願いします。

菱田氏
あらゆるパブリッシャーの悩みや課題をソリューションの面から解決に導く企業でありたいと考えています。我々が単独で解決できない問題もあるかもしれませんが、技術的な課題からデータの活用に関するご相談など、広い範囲でサポートできる環境が整っています。悩んでいることや課題に対して、どんなご相談でも歓迎しています。フォーエムを通じてでも、直接でも、お気軽にご相談いただければと思います。


今後のフォーエムとの取り組みについて


久保
最後に、今後、フォーエムと一緒に取り組んでいきたいことや展望などがあれば教えてください。

菱田氏
まず一つは、クッキーレスへの対応です。これに関してはパブリッシャーへの丁寧な説明が必要になるかと思いますので、フォーエムと一緒に取り組みながら理解を促し、日本でのクッキーレス対策を進めていきたいです。Googleのプライバシーサンドボックスへの対応などもここに含まれてくると考えています。そして、厳しいディスプレイ領域において、一緒に活路を見出していきたいと考えています。ディスプレイ在庫にどう付加価値をつけていくか、データの活用やID、リッチフォーマットやPMP(プライベートマーケットプレイス)といったあらゆる可能性をディスカッションしながら共に伸ばしていきたいと思っています。


■PubMaticについて

​​PubMaticは、デジタル広告の将来のサプライチェーンを提供することにより、顧客価値を最大化する独立系テクノロジー企業です。 PubMaticのセルサイド・プラットフォームは、オープンインターネット上の世界有数のデジタルコンテンツクリエイターが、在庫へのアクセスをコントロールできるように、また、マーケターがROIを高め、広告フォーマットやデバイス全体でアドレサビリティのあるオーディエンスにリーチを可能にし、収益性を向上できるように支援します。2006年の創業以来、当社のインフラストラクチャー主導のアプローチにより、リアルタイムでのデータの効率的な処理と活用を可能にしてきました。スケーラブルで柔軟なプログラマティック・イノベーションを提供することで、お客様の成果を向上させるとともに、活気と透明性の​​あるデジタル広告のサプライチェーンを支援しています。​

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