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デジタル広告の課題と未来 - フォーエムが目指すビジョンとは

デジタル広告業界は大きな市場の変化に直面しています。この激動の時代に、パブリッシャー支援事業を展開するフォーエムがどのように課題に取り組み、どのような未来を描いているのか。今回、株式会社フォーエム代表取締役の綿本と、新たにフォーエムのアドバイザーに就任したアタラ株式会社代表取締役CEOの杉原氏に、業界の現状と展望について語っていただきました。

スピーカー

アタラ株式会社
代表取締役CEO
杉原 剛


株式会社フォーエム
代表取締役
綿本 和真

インタビュアー
株式会社フォーエム
Manager
小山 大地

    目次
  • 杉原氏が評価するフォーエムの魅力
  • デジタル広告業界が直面する課題
  • フォーエムとしての解決策
  • これから実現したい未来について


杉原氏が評価するフォーエムの魅力

小山:まずはお二人に自己紹介をお願いできますでしょうか。

杉原:杉原剛と申します。KDDI、インテルを経て、オーバーチュア(現Yahoo!検索広告)、Google日本法人で広告営業戦略を担当した後、2009年にマーケティングのコンサルティングサービスやツールを提供するアタラ株式会社を創業しました。現在グループで50名ほどでさまざまなクライアントのご支援を提供しています。個人的には国内外のプラットフォーム広告、リテールメディア業界の動向を分析し、最新情報をX、LinkedIn、VoicyなどのSNSにて発信するプラットフォーム業界アナリストでもあります。

綿本:綿本と申します。新卒でソフトバンクに入社後、AnyMind Groupに入社し、現在子会社のフォーエムで代表取締役を務めております。フォーエムでは主にウェブメディアやアプリデベロッパー向けに事業成長の支援を行っており、約1,700を超える*1パブリッシャーのご支援をしております。

小山:デジタル広告業界の変遷を肌で感じてこられたお二人だからこそ、現在の課題や今後の展望について深い洞察をお持ちなのだと思います。
では杉原さん、今回フォーエムのアドバイザーに就任されたきっかけについて教えていただけますか?

杉原:ここ数年、サードパーティCookie、MFA(Made For Advertising)*2、詐欺広告、アドフラウド*3などの問題が同時多発的に発生するような状況でした。これらについての啓発活動をしていく中で、解決するためにはデマンドサイドとサプライサイドが緊密に協力しあわないといけないと思いました。
広告のデマンドサイドとサプライサイドは不思議なもので、同じ広告プラットフォーム上の両端を担っているだけでなく、売り買いの相手でもあるのに、お互いのことはほとんど知らない。この20数年、プログラマティック広告が便利になりすぎて、お互いの顔さえ見る必要がなくなったのも背景にあると思います。
私自身、長年、デマンドサイド側の人間で、広告主や広告代理店に主に向き合ってきたのですが、問題解決の糸口を見つけるべく、サプライサイドにいる方々と話しはじめたところ、驚くほど知らないことがあり、お互いについての理解が深まればやれることは多いと思いました。そんな中で、フォーエムと出会い、パブリッシャーの収益化支援を広く行う立ち位置の会社ということを知りました。

小山:フォーエムの何に魅力を感じられたのでしょうか?

杉原:フォーエムが提供するAnyManagerなどのプロダクトや収益化支援、マーケティング支援のソリューションなどは、とてもよく設計されていると思います。前述の問題は、非常に複雑かつテクニカルなだけでなく、1社で解決できるようなものではありません。多くのパブリッシャーに一元化されたソリューションを提供したり、場合によっては同じ目的や目標をもったパブリッシャーを、ハブとなって集約していく必要もあります。フォーエムは、そのようなことができる、数少ない会社の一つだと思います。 それ以上に、パブリッシャーの情熱やアイデアを実現するというフォーエムのビジョンやパブリッシャーをエンパワーするというミッションがとても心に響き、アドバイザーに就任させていただくことになりました。

1:グローバルでの支援数(参考:AnyMind Group株式会社 2024年12月期第2四半期 決算説明資料より)
2:MFA(Made For Advertising)
デジタル広告で収入を得ることだけを目的として設計されたウェブサイトのこと
3:アドフラウド
ウェブ広告における広告詐欺や広告不正のこと


デジタル広告業界が直面する課題

小山:業界が抱えている課題について、より詳しくお聞かせいただけますか?

杉原:先述の通り、サードパーティCookie、MFA、詐欺広告、アドフラウドなどの問題が同時多発的に発生しています。これらは1個1個が非常にインパクトが大きく、根深い問題です。すぐに解決できるものではありませんが、解決していくためには、デマンドサイドとサプライサイドが本当に協調、協力しないと厳しいと感じています。
また、プログラマティック広告の発展により、デマンドサイドとサプライサイドの距離が開いてしまったことも大きな課題です。お互いの顔を見る必要がなくなり、理解が不足しているのが現状です。

綿本:そうですね。メディア側の立場から見ても、デマンドサイドとサプライサイドの距離感は大きな課題だと感じています。我々も普段の仕事をしていると、プラットフォームに対して仕事をしているという意識が強くなってしまい、その先にいる広告主の存在を見失いがちです。弊社では、 AnyDigital Premium Marketplace(以下、APM)という広告商品を開発し、広告主、広告代理店にご提案を進めておりますが、メディアとして正しいアクションを行うために、デマンドサイドのニーズを理解していくことも目的として取り組んでおります。

小山:プログラマティック広告の収益性低下についても多くの声を聞きますが、この点についてはいかがでしょうか?

綿本:確かにその声はよく聞きますが、サプライサイドの努力も必要だと思います。広告主との対話を通して、評価いただけるような企画、商品を作り、泥臭く提案活動を行うこと。またそれらを通して、自分たちの価値をわかりやすい言葉で言語化、数値化し証明していく。最後に新たなテクノロジーに積極的に投資を行っていくことも大切だと思います。これらをサプライサイドを代表して、取り組んでいきたいです。

杉原:その通りですね。また、MFAの問題も深刻です。特に日本では対策が遅れています。アメリカでは大手広告主が動き始め、中間のアドテク企業、SSPなりDSPなりが対策を取るようになってきたので、統計的には下がってきています。しかし、日本はまだそういう状況ではありません。知らないところで広告費が不適切なところに流れている状況が続いています。

フォーエムとしての解決策

小山:では、具体的なアクションについていくつか伺います。まず短期的な取り組みと、中長期的な取り組み、この2つの軸についてお聞かせいただけますか?

綿本:まずフォーエムとしては、”パブリッシャーの情熱やアイデアを実現する”というビジョンを掲げ、エンパワー出来る存在になっていきたいです。
広告においては、メディアの透明性や健全性を高め、ユーザーはもちろんのこと、広告主や広告代理店に信頼してもらえるような環境を整備した上でより多くの売上をお戻しし、パブリッシャーが良質なコンテンツを作り続けられることに投資していけるエコシステムを構築する支援をしていくことを目指しています。
短期的には、そのエコシステムの構築に泥臭く取り組んでいて、コンテンツパブリッシャーの価値を証明していきたいと考えています。
広告枠が多い、閲覧を阻害しうるフォーマット、クリエイティブの質が悪いといった声を聞くことが多くなりました。しかし、パブリッシャーとしても質の高いコンテンツを作っていくためには、やはり資金が必要です。足元を固めるためにはそうせざるを得ない状況もあると思うのです。
我々もその状況を作り出している側面があることは認識しています。ですが、我々が泥臭く取り組むことで、一日も早くこの状況から抜け出したいし、抜け出さなければならないと思っています。幸いにもAnyMind Groupとして国内海外問わず、多くのブランド企業や広告代理店と接点が多いので、単純に広告予算の獲得がしやすい環境が整っている点は他社にはない強みかもしれません。

中長期的な取り組みとしては、データクリーンルームをはじめとしたデータへの投資は引き続き進めております。Cookieレス対応に関して、3rd Party Cookieの完全廃止自体は撤回されましたが、収益化という点でも、ユーザーのプライバシーを守り、良質なマーケティング環境を構築するという点でも必要なので。

また、AnyMindグループの強みを活かして、広告以外の収益化支援も積極的に行っていきたいと思います。例えば、パブリッシャーが培ってこられたファン、コミュニティを活かした、EC事業の構築から商品企画・生産・販売促進、配送まで一気通貫でサポートすることがグローバルレベルで可能です。
また、AIの活用にも注力しています。8月にはAIを活用したショート動画生成機能の提供を開始しました。他にも複数のアイディアの検証を進めているので、是非パブリッシャーと意見交換をさせてほしいと思っております。

杉原:そうですね。Googleによる3rd Party Cookie廃止の撤回については、誤解が多く、皆さん安心していますが、結果的には引き続き対策が必要です。Googleは3rd Party Cookieに代わる別のアプローチを行う予定なので、引き続きスピードを落とさずに対策を行うべきと考えています。
また、事業の高付加価値化は非常に重要です。広告だけでなく、多様な事業支援ができるのはフォーエムの強みだと思います。将来的にはパブリッシャーの事業ポートフォリオをうまくバランスの取れた形で実現していくことができれば、フォーエムが主導的な立場で業界に貢献できるのではないでしょうか。

これから実現したい未来について

小山:最後に、お二人が描く業界の未来像についてお聞かせください。

杉原:私は、この業界にもっとわくわくドキドキ感を取り戻したいと考えています。デジタル広告黎明期の2000年初頭のような、新しいことにチャレンジできる雰囲気を少しでも取り戻したいですね。そのためには、現在の課題をしっかりと解決し、新しい価値を生み出していく必要があります。
また、アメリカの事例を見ると、新しいことにチャレンジする文化がまだまだ根付いています。例えば、大手広告主の多くが予算の10-15%を実験予算として確保し、新しいメディアやテクノロジーに投資しています。日本でもこういった文化を広めていきたいですね。

綿本:私も同感です。本来、広告やメディア業界は非常に面白い領域だと思っています。難しい状況ではありますが、だからこそ色々とチャレンジしていける機会だと捉えているので、パブリッシャーの皆様との共創を通して明るい未来を創っていきたいと思います。

小山:お二人のお話を伺って、デジタル広告業界の課題は複雑で根深いものだと改めて感じました。しかし同時に、サプライサイドとデマンドサイドが協力し合うことで、新たな可能性が開けるのではないかという希望も感じました。
今後、両端の架け橋となり、透明性の高い健全な広告エコシステムを構築していくこと。そして、広告だけでなく多様な収益化手段を提供し、パブリッシャーの成長を支援していくこと。これらの取り組みを通じて、業界全体がより魅力的で持続可能なものになっていくことを期待しています。

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